京大、映像に酔うと右脳と左脳の活動が乖離することを発見
2015年5月27日 16:15
京都大学の山本洋紀助教らの研究グループは、映像に酔ってしまうと、映像の動きを検出する脳部位の活動が右脳と左脳の間で互いに乖離することを発見した。
3D映画やドローン撮像など、臨場感の高い映像が急速に普及している一方で、映像酔いという弊害も顕著になり、その原因の究明と対策が急務となっている。映像酔いの前兆として、止まっているはずの自分があたかも映像の中の空間で動いているような錯覚(ベクション)を感じることがあり、視運動性眼振とベクションには、映像の動きを検出する脳部位である MT+野が関与していることが分かっている。
今回の研究では、“映像に酔うと視覚野MT+の活動が左右間でお互いに乖離する”、という仮説を検証するために、映像酔いを起こしやすい動画と起こしにくい動画で、脳活動のリズムが左右でどのくらい違うのかを、fMRIを使って調べた。その結果、映像を観て酔ったグループでは、右脳と左脳の活動の相関は、非酔動画を見ている際には高いが、酔動画を見ると大きく低下することが分かった。この結果は、酔動画によって脳活動が左右で乖離するという仮説を支持している。一方、酔わなかったグループでは、そのような相関の低下は認められなかった。
研究メンバーは、「船酔い、車酔い、そして映像酔いと、酔いは文明の進化と共にどんどん身近なものになってきています。(中略)今回、私たち産学連携チームは、映像に酔うと、大脳の一部、映像の動きを感じる視運動野で異変が生じることを突き止めました。この視運動野の変調を頼りに、映像酔いへの耐性を増す治療法や酔いを未然に防ぐ映像加工技術が開発できる可能性があります。」とコメントしている。
なお、この内容は「Experimental Brain Research」に掲載された。論文タイトルは、「Inter-Hemispheric Desynchronization of the Human MT+ during Visually Induced Motion Sickness」。