【メガバンクの2015年3月期決算】国内の貸出利ざやの縮小を手数料収入、株式売却益、海外事業からの収益などで補う
2015年5月17日 22:23
5月15日、3大メガバンクの2015年3月期決算が出揃った。本業のもうけを示す業務純益の増加、増収では揃っていたが、利益では増益と減益に分かれた。日銀のゼロ金利政策が続いて長期金利が低下し、金融機関間の貸出競争が激しく国内の貸出利ざやは縮小したが、それ以外の業務や海外事業の収益で補うという構造は同じ。
保有有価証券の評価損益は、株高を反映して株式は大幅に増加し、日銀の金融緩和を反映して債券は減少している。2016年3月期の今期見通しは、国内は貸出利ざやがなおも縮小するが、それを金融商品販売の手数料収入、株式の売却益、新興国などの海外事業からの収益などで補って最終増益を目指す。
■資金利益は目減りしても実質業務純益は増加
2015年3月期の実績は、三菱UFJ<8306>は経常収益8.9%増、経常利益1.1%増、当期純利益5.0%増の増収増益。年間配当は前期比2円増の18円だった。国内の金融機関では初めて当期純利益が1兆円を超えた。三菱東京UFJ銀行、三菱UFJ信託銀行2行合算の実質業務純益は10%増の1兆1218億円。
国内の貸出利ざやは0.09ポイント減の1.16%で資金利益は目減りし、債券関連の収益も縮小、与信関係の費用計上もあったものの、アメリカやアジアを中心に海外事業の貸出利息が大幅に増えて国内での収益減をカバーした。タイのアユタヤ銀行が連結子会社に加わったことも寄与。グループ全体の国際統一基準の自己資本比率は、総自己資本比率は前期末から0.14ポイント上昇し15.68%、「Tier 1比率」は0.17ポイント上昇し12.62%だった。
みずほ<8411>は経常収益8.6%増、経常利益2.3%増、当期純利益11.1%減の増収、最終減益。年間配当は前期比1円増の7.5円で、配当を従来予想から50銭上積みした。みずほ銀行、みずほ信託銀行2行合算の実質業務純益は12%増の7213億円。
投資信託や保険の販売による手数料収入が増え、債券の売買益のほか株高による株式売却益も寄与して経常増益となったが、法人税引き下げによる繰り延べ税金資産の取り崩しなど税金関係の費用が増加して最終減益。グループ全体の国際統一基準の自己資本比率は、総自己資本比率は前期末から0.22ポイント上昇し14.58%、「Tier 1比率」は0.15ポイント上昇し11.50%だった。
三井住友FG<8316>は経常収益4.5%増、経常利益7.8%減、当期純利益9.8%減の増収減益。海外事業の利益が増え当期純利益が当初予想より536億円上積みされたため、年間配当は期末配当を従来予想より10円積み増し前期比20円増の140円とした。三井住友銀行単独の実質業務純益は4%増の8430億円。
貸出競争の激化で国内の貸出利ざやは0.08ポイント減の1.29%で資金利益が減少したが、アジア、アメリカなど海外で貸出利息が大幅に増加した。海外ビジネスの強化のためのコストがかさんだこと、株式売却益が半減したことなどが減益要因。グループ全体の国際統一基準の自己資本比率は、総自己資本比率は前期末から1.07ポイント上昇し16.58%、「Tier 1比率」は0.70ポイント上昇し12.89%だった。
■「手数料収入」「海外事業」で増益を確保
2016年3月期の通期業績見通しは、三菱UFJ<8306>は当期純利益が8.0%減の9500億円を目標とする。予想年間配当は前期と同じ18円。国内の貸出利ざやの縮小を海外事業で補う構造は変わらない見通し。
みずほ<8411>は当期純利益2.9%増の最終増益を見込む。予想年間配当は前期と同じ7.5円。貸出利ざやの縮小が続き資金利益が減少する分を投資信託や保険の販売による手数料収入の伸びで補う。
三井住友FG<8316>は経常利益6.1%減、当期純利益0.8%増で最終増益を見込む。予想年間配当は前期比10円増の150円。利ざやが大きい海外での融資拡大で貸出利息収入が増えることを見込む。(編集担当:寺尾淳)