米空軍の無人宇宙往還機「X-37B」、まもなく4回目の飛行へ ソーラー・セイルも同乗

2015年5月14日 15:00

 米空軍の無人宇宙往還機「X-37B」の4回目の打ち上げに向けた準備が、米フロリダ州ケープ・カナヴェラル空軍ステーションの第41発射台で続けられている。X-37Bはすでに、相乗りする超小型衛星たちと一緒にロケットに搭載され、打ち上げのときを待っている。

 打ち上げ日は米東部夏時間5月20日に予定されている。時刻はまだ発表されていない。

 X-37Bは米空軍が運用する無人の宇宙往還機(スペースプレーン)で、ボーイング社が製造を担当した。完全な自律飛行が可能で、またスペース・シャトルのように再使用ができるように造られている。

 同機はこれまでに2機が製造され、1号機は2010年4月22日に打ち上げられ、同年12月3日に着陸。2号機は2011年3月5日に打ち上げられ、2012年6月16日に着陸している。そして2012年に12月11日から2014年10月17日にかけては、1号機の2回目の飛行が行われている。X-37Bの軌道上での滞在可能期間は、カタログスペックでは270日とされているが、2回目のミッションでは469日間、3回目のミッションではさらに上回る674日間、約22か月間にもわたって飛行し続けている。ただ、そのミッションの内容については明らかにされていない。

 今回のミッションは通算4回目となる。今回もそのミッションの内容はあまり公表されていないが、電気推進システムの一種であるホール・スラスターの試験を行うことと、米航空宇宙局(NASA)による材料実験装置が搭載されることが発表されている。

 また今回、ロケットの余剰能力を利用して、7機のキューブサット(超小型衛星)も搭載され、X-37Bと一緒に打ち上げられることになっており、そのうちの1機として、惑星協会(The Planetary Society)が開発したソーラー・セイル「ライトセイル」が宇宙へ送られる。

 ソーラー・セイルは、宇宙空間で巨大な帆を張り、そこに太陽の光を受け、その反作用で航行するというもので、燃料を使うことなく、宇宙空間を進むことができる。アイディア自体は古くからあるものの、帆の素材や展開方式などの点から実現は難しく、近年になりようやく実用化の目処が立ってきた。2010年には、日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発したIKAROSが飛行に成功している。

 惑星協会は宇宙探査の広報、普及、教育活動を行っている民間団体で、1980年にカール・セーガンやブルース・マレイ、ルイ・フリードマンといった、伝説的な人物らによって設立された。同協会は長年、ソーラー・セイルの開発を行っており、2005年に「コスモス1」を、2009年には「ナノセイルD」といった実験機を開発したが、いずれもロケットの打ち上げが失敗したことで失われている。その後、2010年に「ナノセイルD2」は打ち上げに成功、帆が展開できることを実証した。

 ライトセイルは惑星協会が新たに開発したソーラー・セイルで、打ち上げ時は30 x 10 x 10cmの直四角柱の形をしているが、帆を展開したときの大きさは32平方mにもなる。開発費などは同協会の会費や寄付金などによってまかなわれた。

 今回打ち上げられるライトセイルは試験機に位置づけられており、帆が問題なく展開できるか、姿勢制御システムが設計通り機能するかなどが試される。ただ、地球低軌道に乗ることから、地球の大気からの抵抗が大きいため、太陽光による推進はできない。またこの抵抗によって、打ち上げから4週間ほどで大気圏に再突入する見込みだという。

 一方、惑星協会はまた別のライトセイルも開発しており、こちらは2016年にファルコン・ヘビー・ロケットで打ち上げられる予定となっている。このときは高度約720kmの軌道に乗るため、地球の大気の抵抗はほとんど無いことから、太陽帆による航行が可能になるという。

■In Pictures: LightSail, Meet X-37B | The Planetary Society
http://www.planetary.org/blogs/jason-davis/2015/20150508-in-pictures-lightsail-meet-x37b.html

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