ラットは溺れた仲間を助ける―共感・援助行動を確認=関西学院大

2015年5月13日 16:19

 関西学院大学は11日、文学部・佐藤暢哉教授およびその研究グループが、齧歯(げっし)類であるラットが、窮地に陥っている仲間のラットに対して共感し、その苦境から助け出すことを示したと発表した。社会生活を送る上で重要な他者に対する共感の進化的側面やその神経メカニズムの解明につながることが期待できる。

 向社会的行動とは、報酬を期待せずに他者に利益をもたらす自発的行動のこと。他者への共感を動機として生起すると考えられている。こうした向社会的行動は、霊長類にしか見られないと考えられていたが、最近の研究では、ラットが狭いところに閉じ込められた同種他個体を、その状況から解放するという向社会的行動を示すことが報告され、注目を集めていた。

 研究では、水を張ったプールを用いた実験によって、ラットが溺れそうになっている同種の他個体を、その状況から助けるかどうかについて検討した。ペアで飼育しているラットの片方を、水を張ったプールに入れ、もう片方はプールに隣接した、濡れていない部屋に入れた。水に浸かっているプール側のラットが隣接する陸側の部屋に移動するためには、2つの領域の間にあるドアを陸側のラットに開けてもらう必要があった。

 実験の結果、陸側のラットはドアを開けることによってプール側のケージメイトを、そこから助け出すことを速やかに学習した。ケージメイトが水にさらされていない場合は、そのようなドア開け行動は学習されなかった。つまり、ケージメイトが窮地に立たされているときのみにドアを開けることを学習したということになる。

 また、ラットが水を嫌っていることを示すことにより、プール側のラットが実際に窮地に立たされていたことについても示した。さらに、陸側の援助ラットは、以前に水にさらされる経験を持っていた場合は、そうでない場合よりもドアを開けてケージメイトを助けることを早く学習した。このことは、実際に辛い経験をすることによって、ケージメイトを窮状から救い出す動機が高まったことを示している。

 これらの実験より、ラットが窮地に立っている同種他個体を助けることを実験的に示し、自身が辛い経験をした場合には、援助行動が早く生じることを示した。また、ラットにとって、苦しんでいる仲間を助けることは、食物を得ることよりも価値が高いと言えるという。

 本研究成果は比較認知科学雑誌「Animal Cognition」オンライン版に5月12日に掲載された。論文タイトルは「Rats demonstrate helping behaviour towards a soaked conspecific」(ラットが水に浸かった同種他個体に対する援助行動を示した)。(記事:町田光・記事一覧を見る

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