大型連休明けの仕切り直し相場でサブ・シナリオ志向の少数派はデング熱関連株をマークも一考余地=浅妻昭治
2015年5月11日 10:45
<マーケットセンサー>
大型連休明け後に動きが活発化するのは、株価だけではないらしい。ヒトスジシマカも、活動期間入りが間近で、その動静がこのところテレビ、新聞で伝えられている。このヒトスジシマカは、例のデング熱のウイルスを媒介する蚊で、昨年8月にはこの蚊が都内の公園で暗躍して69年ぶりに国内感染によるデング熱の感染が確認され、次々と感染患者が拡大したことから、一種のパニックとなり、これがデング熱関連株のゲリラ相場的な突発高を引き起こし、さらにエボラ出血熱関連株への世界的人気に引き継がれ、感染症関連株相場が展開されたことは記憶に新しい。
株価もヒトスジシマカも活動期間入りとなれば、多方面にわたる変化が刺激となって、投資家心理も仕切り直しムードを強めることになる。連休中は、日経平均が700円以上も下ぶれて、例の米国の強力な相場格言の「5月は売り逃げろ(Sell in May,and go away)」を意識せざるを得なかったが、もう少しポジティブに先行き対応を進めたいとのムードも高まる。
もちろん株価の方でこの先行きの大きなカギを握るのは、週明けの主力株の動向で、とくにトヨタ自動車<7203>(東1)次第となる公算が大きい。同社は、前週末8日に3月期決算を発表し、今2016年3月期業績が、市場コンセンサスを下回ったが、新聞・テレビの扱いは、3期連続の過去最高営業利益更新はもとより、増配と自己株式取得との合計で株主への利益還元は、1兆円に迫るなどと総じて好意的である。この結果、8日の米国市場では、同社のADR(預託証券)は、東京市場の終値に対して231円(円換算値)で引けて返ってきている。
海外市場全般も、フォローである。8日発表の4月の米国雇用統計は、強弱綯い交ぜのちょうどいい内容で金融緩和策の継続期待を高め、イエレンFRB(連邦準備制度理事会)議長の「株価割高」発言を押し戻し、ニューヨーク・ダウ平均株価が、267ドル高と大幅続伸した。英国の総選挙も、与党の保守党が過半数を制して、EU(欧州連合)離脱懸念もひとまず遠退いた。内外の好材料・好環境で、トヨタの株価が、4月20日の8275円を安値に日足の逆三尊チャートから最高値トライに再発進するようなら、スケールの大きい出直り相場をリードするはずだ。
さてもう一つ活動期間入り間近のヒトスジシマカは、どうか?これも、トヨタ主導の出直り相場が本格化するようなら、関連株をマークする妙味はあるはずだ。昨年の感染拡大の再現を当て込んだりしたら不謹慎とお叱りを受けそうだが、災難はいつどこで起こるか予測不能である。現に国立感染症研究所では、海外でデング熱に感染して帰国後に発症した患者数は、4月中旬までで昨年同期比で1.5倍にたったと注意を呼び掛けた。昨年8月以降の感染拡大も、この海外旅行者により持ち込まれたデング熱ウイルスが、ヒトスジシマカによって吸血されることにより媒介され、海外渡航歴のない患者の国内感染につながっている。
もちろん、東京都も、昨年の感染再現を予防すべく、今年4月に代々木公園でヒトスジシマカの採取調査を行うとともに、幼虫のボウフラが蚊に成長するのを防ぐために薬剤も散布した。しかし、ヒトスジシマカの活動期間は、連休明けの5月中旬から10月中旬までで、気温が、15度以上になると吸血活動を開始し、さらに気温が、25度~30度まで上昇すると吸血活動が活発化するそうである。今年は、例年以上に気温の上昇が著しいようで、デング熱の再発生、感染拡大も懸念されることになる。
株価の方は、中心はくどいようだがトヨタに代表される主力株で、これに銀行株などの出遅れ内需株が補助エンジンとなって上値トライが続くはずだ。ただ満場一致のメーンの相場シナリオに違和感を覚える投資家もいるはずで、そうした少数派は、サブ・シナリオのデング熱関連株に待ち伏せ買いするのもあるいは一法かもしれない。(本紙編集長・浅妻昭治)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)