真意をはかりかねるイエレン発言

2015年5月11日 07:59


*07:59JST 真意をはかりかねるイエレン発言
先週、イエレン連邦準備制度理事会(FRB)議長は、国際通貨基金(IMF)本部で行われたラガルド専務理事との対談で、米国株について、「一般的に言うと割高」という趣旨の発言をした。これを受けて当日の米国株式市場はそろって大きく下落した。
 しかし、米国株式市場は年初からほとんど上がっておらず、足元では過熱感は感じられない。ダウ平均のPERも歴史的にみて割高圏とはいえない水準にある。イエレン議長は一体何をもって「一般的に割高」と言ったのであろうか。
 一般的にはイエレン議長の発言は、利上げへの地ならしの為の発言と受け止められているようだ。イエレン議長は同時に金利引き上げ時の金利上昇リスクにも言及しており、金利引き上げ時に株式市場にショックを与えることを回避するため、予め株価の上昇を牽制したという理解だ。利上げするのに備えて、利上げをもっと織り込みなさいというわけだ。
 しかし、FRBは利上げは経済指標次第という姿勢を示しているが、足元の米国経済の指標は今ひとつ冴えない。先週末に発表された4月の雇用統計は予想通り非農業部門雇用者数が20万人を超えたが、イエレン発言はその前のものである。その雇用統計自体も、賃金等内容をよく見ると利上げが前倒しになるようなものではないとの判断が大勢である(3月分も下方修正)。
 イエレン発言は、利上げの地ならしというよりも、米国経済の減速を受けて、「利上げまでかなり期間があるが(つまり金融緩和状態が続くが)調子に乗るなよ」という警告のように思える。
 ただ、いずれにせよ、以前も特定のセクターについての割高発言で物議を醸したが、FRB議長が株価の高低について直接発言して調整させる手法はやや軽率という印象が拭えない。《YU》

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