東大、ナノスケールの世界での、不思議な電気抵抗の振る舞いを明らかに
2015年5月9日 16:35
東京大学のHowon Kim(ホーウォン キム)特任研究員・長谷川幸雄准教授らの研究グループは、鉛からなる探針と鉛基板との間での原子接触状態における電気抵抗を測定し、2つの電極の先端原子間の相対的な位置関係によって、抵抗値が変化することを発見した。
一般に、金属電線の電気伝導度は断面積に比例する。しかし、径を1ナノメートル程度まで細くすると、中を流れる電子の波長と同じ程度になるので波としての性質が無視できなくなり、量子的な振る舞いが現れるようになる。そして、径が1ナノメートル程度の場合、電気伝導は断面積には比例せず、面積の減少に伴い階段状に減少するなど、不思議な現象が起きる。
本研究グループは、探針制御技術の性能を高めた上で走査トンネル顕微鏡の原子像観察技術を生かし、あらかじめ取得した鉛の基板表面の原子像から探針の位置を原子レベルで正確に決めつつ、鉛探針と基板表面の間隔を少しずつ狭めながら電気伝導度を測定することによって、基板表面上での各場所における電気伝導度の分布とその間隔依存性を得ることに成功した。
その結果、原子直上では、-35pmあたりで一旦、電気伝導度は高くなるものの、さらに基板に近づくにつれて電気伝導度の増加は抑えられ、-50pmでは他の位置に比べても電気伝導度の値は小さくなることが分かった。また、3つの原子の間でも、その下に2層目の原子がある位置と原子が無い位置では、電気伝導度が異なることも明らかになった。
今回の研究成果は、接触時の原子配列の重要性を指摘するとともに、接触場所ごとの抵抗値を与えており、原子デバイス設計における重要な指針となると期待されている。
なお、この内容は「Physical Review Letters」に掲載された。論文タイトルは、「Site-dependent evolution of electrical conductance from tunneling to atomic point contact」。