ADHDの薬物治療効果を内服前に予測できる可能性―東大
2015年5月5日 17:00
東京大学の石井礼花助教らの研究グループは、注意欠如多動性障害(ADHD)に対する小児用内服薬の治療効果を、光トポグラフィーと呼ばれる脳機能検査法で内服前に予測できる可能性があることを発見した。
小児の注意欠如多動性障害(ADHD)の薬物治療のひとつとして、塩酸メチルフェニデート(MPH)の内服がある。しかし、副作用として食欲低下や睡眠への影響があり、継続的な内服の前に薬物治療効果を予測するための客観的な指標が求められている。
今回の研究では、MPHの内服歴のない6歳から12歳のADHDの患児(未内服群)22名、1カ月以上MPHを内服していたADHD患児(内服群)8名を対象に、光トポグラフィーを用いた脳機能評価を行った。
その結果、内服前に比べてMPHを1回内服した後の左下前頭回におけるNIRS信号が高くなるほど、MPHを1カ月継続して内服した後の治療効果が高いという結果が得られた。1年間内服した後のMPHの治療効果についても同様だった。これは、内服前と1回内服後のNIRSの信号変化によって長期的なMPHの効果を予測できる可能性を示している。
今後は、ADHDの患児や家族に負担をかけない治療の選択ができるようになることが期待される。一方、今回の成果を実用可能にしていくためには、多施設、多人数で再現性のある結果を得られるか検証する必要があるという。また、ADHDの治療には、心理社会的治療やアトモキセチンなどの薬物療法もあることから、適切な治療を選択するためには、このような他の治療との比較検証も行うことが望ましいという。
なお、この内容は「Neuropsychopharmacology」に掲載された。論文タイトルは、「Neuroimaging-aided prediction of the effect of methylphenidate in children with attention deficit hyperactivity disorder-a randomized controlled trial」。