東大、「水をはじく表面」近くでは塩が溶けにくいことを発見―汚れにくい表面材料の開発に期待

2015年5月5日 12:18

 東京大学の伊藤喜光助教・相田卓三教授らの研究グループは、水をはじく性質を持つ材料表面の近傍では、塩が水に溶けにくくなることを発見した。理論的には1953年に予言されていた現象を初めて実験的に示した。この成果は、汚染を防止する新しい表面材料の開発などに貢献できる可能性があるという。

 蝋やテフロンに代表される「水をはじく表面」に水をたらすと、水は粒状になり転がるようにして表面から逃げていく。このような「水をはじく表面」と接している水の挙動は古くから関心を持たれ、研究対象となってきたが、「水をはじく表面」上の水の構造などは、十分に明らかになっていなかった。

 今回の研究では、上部に人工的に「塩」を配置した原子レベルで平坦な板を用意した。塩の下には水をはじく薄い膜(水をはじく表面)を配置し、「塩」と膜表面との距離を4段階に分けて水中に沈め、「塩」の溶け出しを観測した。その結果、「塩」と「水をはじく表面」との距離が近ければ近いほど、「塩」は溶け出しにくくなるという現象が観測された。

 これまでは、「塩」を「水をはじく表面」からある決まった距離に固定する方法と水中でのその溶けやすさ評価する方法の確立が困難で実証されていなかったが、今回の研究では、それを単分子膜と呼ばれる膜を利用することで解決した。

 表面の汚染は、身近なところでは服の汚れ、規模の大きい物体では船底への貝の付着など、さまざまなところで問題となっている。今回得られた知見は、このような汚染を防ぐための新しい表面材料設計のための指針を与えると期待される。

 また、タンパク質の構成要素には、塩のような構造と水をはじく構造が多く含まれているが、水が主成分である体内でそれらがどのように影響し合って複雑な生体機能を発現しているかを解明することにもつながる可能性がある。

 今回の研究成果は米科学誌「サイエンス」に掲載された。論文タイトルは、「Subnanoscale hydrophobic modulation of salt bridges in aqueous media」。

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