まだまだ、負けない! 戦後70年を支え続けた日本の「ものづくり」

2015年5月3日 13:34

 戦後70年目の節目を迎える今年、日本の「ものづくり」が見直されている。戦後の日本の復興と経済発展を支えてきたのは、間違いなく、日本の製造業者が尽力してきた「ものづくり」だろう。とくに自動車と家電はメイド・イン・ジャパンの花形として、その品質と性能、信頼性を全世界にしらしめることに大きく貢献し、日本の高度成長を牽引してきた。また、私たち日本人にとって「ものづくり」という言葉は、単に物を作るという意味だけではなく、日本国民の精神性や歴史を表す象徴的な言葉でもある。

 ところが、近年、中国や韓国、台湾などのアジアメーカーの台頭により、日本ブランドが苦境に立たされているといわれている。日本の「ものづくり」はもう、世界では通用しなくなってしまったのだろうか。

 テレビをはじめとする家電製品は、2000年代前半頃から徐々に韓国製や台湾製、中国製に売り場を奪われていった。また、自動車業界も同じだ。かつては海外でも「安かろう、悪かろう」というイメージが強かった中国製、韓国製の製品も、この10年ほどの間に品質も改善され、それに伴って売上も伸ばしていった。

 しかし、日本企業の「ものづくり」が敗北したわけではない。

 例えば、半導体国内最大手の東芝<6502>は、テレビやパソコンの販売では苦戦しているものの、半導体や海外の発電設備などが好調で、2014年4~12月期連結決算(米国会計基準)は営業利益が前年同期比6%増となる1648億円を記録。4~12月期として過去最高益を更新した。また15年3月期の業績予想でも、売上高3%増の6兆7000億円、営業利益14%増の3300億円となり、25年ぶりの過去最高益となった。

 また、日立製作所<6501>も近代化が進む中国で、商業ビルなどにエレベーターを納める事業や、英国の高速鉄道向けの事業が好調で、2年連続で営業利益過去最高を更新。三菱電機<6503>も徹底した選択と集中を行い、これまで主力事業だったLSI事業やパソコン事業、洗濯機事業などから撤退した代わりに、ビルシステム事業や日本を代表する衛星メーカーとして宇宙事業などに力を入れることで収益性の高い事業展開に成功し、こちらも実に7年振りとなる過去最高益を計上した。とくに宇宙事業は、トルコやカタールなどからも通信衛星の受注を受けており、今後も国内外での市場の成長が期待されている。まさに、日本の「ものづくり」の高い技術力が求められる分野といえよう。

 高い技術力に加え、日本のものづくりのすごいところは、ユーザーのニーズにきめ細かく応えるための開発姿勢にあるのではないだろうか。

 ヤマハ発動機<7272>は二輪車メーカーとして世界でも高いシェア持っているが、それを支えるのはやはり日本で培われた高い品質である。そのヤマハ発動機のモノ作りの精神を受け継ぎ、除雪機の開発を行うヤマハモーターパワープロダクツ株式会社開発部の「生活研究」という取り組みが面白い。同社は静岡県にあるので、たとえ冬場でも、日常の中で除雪機が使わるシーンを目にすることはない。そこで、同社開発部の担当者が、長野県・戸狩温泉スキー場の宿泊施設を訪れ、実際に除雪機を使う場面の中で、使う人の声を拾う活動を行っているのだ。

 同じ地域でも、12月と2月では雪の質も量も変わる。さらには、利用者の年齢や場所によっても求められるものは大きく違ってくる。データや机上ではなく開発者自身がこれらのニーズを利用者目線で理解する徹底した現場・現物主義。それがヤマハの「生活研究」なのだ。これこそが、日本メーカーならではの「ものづくり」の姿勢ではないだろうか。

 日本の「ものづくり」は単純に性能や頑丈さだけを追求するものではない。ましてや中国や韓国のように価格で勝負するようなものではない。「日本製品は高い。でも、欲しい」そう思わせるような「ものづくり」ができれば、日本製品はまだまだ中国や韓国、台湾製品に負けることはない。(編集担当:藤原伊織)

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