三原康裕氏「ものづくりへの真摯な思いを形にしたい」 三陽商会新ブランド「クレストブリッジ」2015秋冬(後半)

2015年4月21日 11:26

クリエイティブ・ディレクターに就任した三原康裕デザイナー。ハウスチェックを大胆に取りれたクレストブリッジ2015秋冬コレクションを前に。

 三陽商会はきょう20日、新ライセンスブランド「ブルーレーベル クレストブリッジ」「ブラックレーベル クレストブリッジ」の初コレクションとなる2015秋冬商品を発表。クリエイティブ・ディレクターに就任した三原康裕デザイナーも出席し、今後の販売戦略や新商品へのこだわりなどについて説明した。三原氏は、クリエイティブ・ディレクター就任に対する思いや、新コレクションへのこだわり、日本のものづくりに対する自身の考えなどについて語った。

――クリエイティブ・ディレクター就任について。

 これまで、どちらかというとアバンギャルドで世の中に反抗的なものを作ってきたので、最初にお声がけいただいた時は、なぜ僕が?という思いもあった。だが、自分のブランドのもう1つの側面にある、洋服やものを作ることが好きだという部分に目を向けていただいたのだと思い、興味を持った。

 三陽商会のDNAというのは、創業から70年以上に渡りものづくりに特化し、海外ブランドのアプルーバルを数多く手がけてきたことや、本物を見てきたということ。それに尽きると思う。今回のコレクションも、スタッフの方々との会話や私のデザインに対するフィードバックが表れたもの。そうしたものづくりに対するスタッフの姿勢を表に出していきたい。モチベーションの高さや、熟練した技術を軸にしていくことが、“継承と革新”につながるものだと実感しているし、そこにブランドとしての伸びしろがあることを実感していただきたい。  

――自分のブランドとの違いは。

 私たち日本人は、英国のものに対する憧れや安心感を持っていると思うが、その思いや情熱を表現したかった。私は英国のファッションだけでなく、音楽やアートも好きだし、ひと言で英国といっても色んなエッセンスがある。既存のお客様には、そうした様々な要素を含んだ商品の可能性や発展性を伝えたかった。自分のブランドでは、いわば自分の考えていることや、表現したいことを落とし込んでいる。エクストリームな面もあるので、クレストブリッジとは相反するところもあるが、ものづくりに真摯に取り組む思いはどの共通している。

 デザイナーがすべてではないし、工場や企画のスタッフの方々の思いを商品のクオリティーとして表したいと思う。素材や縫製、デザイン、シルエットももちろん重要なのだが、こうした気持ちがとても重要だし、ブランドの本質だと考えている。

――従来のブルーレーベル、ブラックレーベルとの違いは。

 10~50代と幅広い客層をターゲットとしている点だ。私のブランドは、20~40代の顧客が中心なので、ここまで幅広い客層がいるというのは、正直未開の地でもあった。ただ、従来のデザインなどを否定するということはしていない。英国らしさやものづくりへのこだわりなど、このブランドが持つ本質に、どう新しいエッセンスを加えるかということを考えた。

 今回発表したコレクションを、“ストリート感”と表現されることもある。また、イギリスと言っても、今のものからクラシックなものまで幅広い。コーディネートの仕方も含めて、可能性や広がりを表現したい。

――ショーでも印象的だったハウスチェックについて。

 ブランドのヘリテージ(資産)について、スタッフの方々と時間をかけて研究した。チェックは世の中に溢れている分、印象に残らないこともある。逆に、新しいものは、相当の時間をかけない限り、印象には残らない。新しさがあり、かつブランドとしての落ち着きや安心感があるものは何かを吟味した結果、このブロックチェックに辿りついた。ブランドらしいオリジナリティーや時代に左右されないものが表現できたと思っている。

――日本のものづくりについて。

 今、過渡期を迎えていると思う。私がファッションの世界に入ってから、生産業の衰退も見られる。単に日本で作られるものがメイド・イン・ジャパンなのか?という疑問も消費者の方の間でも広まりつつある。本当にいいものを作らないと、日本の生産業は駄目になってしまうと考えている。

 私自身40代に入ったが、20年後もデザイナーという仕事を続けられているだろうかというのも、そこにかかっていると思う。日本人としていいものを後の世代にきちんと残すための目利きができるかも重要だ。例えば山奥の小さな工場だったり、いいものを作っているところは日本の各地にあり、そこにきちんと付加価値を加え、販売していくことをやらない限り、消費者には伝わらないだろう。生産業を斜陽産業にしてはいけないと思うし、夢や発展性があると感じてもらえるものにしなくてはいけない。デザイナーは、そこに光を当てる仕事だと感じている。

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