神経のシナプスは継続した刺激で減少―環境に適応して過剰な興奮を抑制=東工大
2015年4月20日 13:42
東京工業大学の鈴木崇之准教授らは、外界からの継続した刺激に対し、脳の神経細胞がシナプスの構成タンパク質を入れ替え、数を減らすことによって、環境に適応することを発見した。
ヒトは、見たり聞いたりしたことによって、神経と神経の接続部分であるシナプスという構造の特性が変化し、ものを覚えたり、ものの考え方が変化したりするする。このことを神経活性依存的なシナプスの可塑的な変化と呼んでいるが、前シナプスの活性部位の変化や、シナプス可塑性をコントロールする分子実体についてはよく分かっていなかった。
今回の研究では、ショウジョウバエに3日間普通の強さの光を当て、シナプスの変化を観察した。その結果、前シナプスと呼ばれる構造の構成分子が再構成を起こすことが分かり、一つ一つの神経のシナプスの数が数えられる状態で、シナプスの減少が測定できた。また、後シナプス側から前シナプス側に情報の伝達が行われる必要があること、その実態がWNTと呼ばれる分泌タンパクであることなどが分かった。
今回発見されたシナプスの変化は、過剰な情報の伝達を抑制し、過剰な興奮による神経細胞死から守る自己防衛機能を反映していると考えられる。このような視神経細胞の環境適応能力は、経験による学習や記憶などとメカニズムが類似であると考えられ、脳神経系に無数にあるシナプス接続の柔軟な適応能力の分子メカニズムの全貌を解明することにつながると考えられる。
今後は、WNTシグナルを操作し、シナプスの変化を自在に操作することによって、神経回路を神経細胞死から守ることが出来るようになり、神経変性疾患や精神疾患の治療に役立つことが期待される。
なお、この内容は「Neuron」オンライン版に掲載された。論文タイトルは、「Molecular Remodeling of the Presynaptic Active Zone of Drosophila Photoreceptors via Activity-Dependent Feedback」。