秋田大、甲状腺がん悪性化の機構を解明―治療・診断法の開発に期待
2015年4月19日 21:38
秋田大は17日、同大生体情報研究センター・大学院医学系研究科 微生物学講座の佐々木雄彦教授らの研究チームが、甲状腺癌が悪性化する機構を発見したと発表した。この発見は、甲状腺癌をはじめ、特定の脂質の蓄積が引き金となる様々な癌の悪性化に関わることが予想され、その治療への応用も期待されるという。
笹木教授らの研究チームが新たに解明したのは、甲状腺癌の悪性化を抑制させる機構。マウスを使った実験と、新しい脂質解析技術の開発により、研究チームは甲状腺癌抑制に重要な働きを持つものとして、PTENとINPP4Bという二つの癌抑制遺伝子を特定した。ヒトの甲状腺癌や子宮内膜癌などでも同じ結果が得られたという。
この研究により、PTENとINPP4Bは協調して、過剰に生成されることで癌化するPIP3(細胞膜を構成するリン脂質の一種) の異常蓄積を防ぎ、癌の悪性化を抑制するブレーキの役割を担うことが明らかになった。今後、INPP4Bを作用点とした新しい医薬や、PIP3測定による新しい診断法の開発につながることが期待される。
この研究は、内閣府の最先端・次世代研究開発支援プログラム(NEXT Program)「病態関連膜脂質代謝の最先端研究-医薬応用への戦略的展開-」、並びに独立行政法人科学技術振興機構(JST)/日本医療研究開発機構(AMED)の戦略的創造研究推進事業チーム型研究(CREST)「疾患における代謝産物の解析および代謝制御に基づく革新的医療基盤技術の創出」の一環として行われ、4月16日に米国癌学会誌「Cancer Discovery」のオンライン速報版で公開された。論文タイトルは、「INPP4B is a PtdIns(3,4,5)P3 phosphatase that can act as a tumor suppressor」「In vivo role of INPP4B in tumor and metastasis suppression through regulation of PI3K/AKT signaling at endosomes」。(記事:町田光・記事一覧を見る)