東洋紡が「骨再生誘導材」の治験を開始  次世代の骨再建材料として18年に製品化

2015年4月19日 13:33

 病気や怪我、あるいは老齢化により骨の一部が欠損(欠ける、穴が開く、痩せるなど)することで、日常生活に支障が出ることがある。例えば、歯科・口腔外科領域では、歯を支える周囲の骨や顎の骨が欠損することで、噛めなくなる、発音が正しくできなくなるなどの障害が挙げられる。また、歯のインプラント治療を行う際には、歯を支える骨(歯槽骨)の再建が必要になる場合がある。

 欠損した骨を再建する治療法としては、患者自身の健常な骨を採取して移植する「自家骨移植」が一般的。現在はこの「自家骨移植」が最も信頼性の高い治療法だが、入院治療が必要となることに加えて、骨の採取部に傷や痛みが残る場合があるという。このため、こうした患者の負担を軽減できる新たな技術・治療材料が求められていた。

 これを受け、東北大学では、「骨再生誘導材」、リン酸オクタカルシウム・コラーゲン複合体(OCP/Collagen)の開発を進めている。「骨再生誘導材」、リン酸オクタカルシウム・コラーゲン複合体(OCP/Collagen)は、骨欠損部に埋入して、新生骨の形成を誘導させる次世代の骨再建材料である。

 今回、このOCP/Collagen を東洋紡<3101>が製品化するという。東洋紡は、OCP/Collagen を本年6月初旬より、歯科・口腔外科領域において治験を開始する。

 同社は、東北大学が開発を進めてきた「骨再生誘導材」 OCP/Collagen を、従来の「自家骨移植」に代わる次世代の骨再建材料であると考えた。2013年より東北大学と共同で、動物実験を行うとともに、各種安全性試験および非臨床試験を実施してきた。そして、治験の準備が整ったため、主に歯のインプラントのための骨再建を対象として、東北大学を主幹施設とした多施設共同治験を開始する。

 OCP/Collagen は、粉末状のリン酸オクタカルシウムと医療用コラーゲンを原材料として、スポンジ状のディスクに加工したもの。骨欠損部や骨の薄くなった部分に埋入されると、リン酸オクタカルシウムがコラーゲンを足場としながら、自身を新生骨に置換するかたちで、骨の再生を誘導する。形成された新生骨は、元の自家骨と同等の性質を示すことが期待される。また、分解・吸収されるので、体内には残らないという。さらに、健常な自家骨を採取する必要がなく、インプラント治療の場合でも、入院治療の必要がない。患者の負担を大幅に軽減することができるという。

 今後、東洋紡では歯科・口腔外科領域における治験を実施し、有効性および安全性を評価する。治験終了後は、直ちに厚生労働省に製造販売の承認申請を行い、2018年度からの本格販売を目指す。(編集担当:慶尾六郎)

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