京大、悪性脳腫瘍の遺伝子異常の全体図を解明
2015年4月17日 23:19
京都大学の小川誠司教授らによる共同研究チームは、700例を超える世界最大規模の網羅的遺伝子解析を行い、700例以上の悪性脳腫瘍(低悪性度神経膠腫)における遺伝子異常の全貌を明らかにした。
脳腫瘍は、根治することが極めて困難な病気で、悪性度に基づきGradeがIからIVまで分類されている。Gradeによって遺伝子異常の内容が異なると考えられていたが、その全貌については明らかになっていなかった。また、低悪性度神経膠腫と呼ばれるGradeがII~IIIの脳腫瘍は段階的に悪性化していくが、進行していく中でどのような遺伝子異常が発生していくのかということも解明されていなかった。
今回の研究では、332例の低悪性度神経膠腫のDNAを採取し、次世代シークエンサーを用いた網羅的遺伝子変異解析をし、さらに、the Cancer Genome Atlasが公開している425例のシークエンスデータも利用して分析を行った。その結果、低悪性度神経膠腫は遺伝子変異パターンにおいてIDH1/IDH2、TP53変異、1p/19q co-deletionの有無によって3群に分かれることが分かった。
また、詳細にデータを解析することにより、1p/19q co-deletionには亜型が存在することや、従来の解析では同定することが困難なTP53遺伝子の異常を見つけることができ、IDH1/IDH2の変異を有する低悪性度神経膠腫は99.7%が TP53遺伝子の異常か1p/19q co-deletionのどちらかを有することが明らかとなった。
研究メンバーは、「悪性脳腫瘍について、これだけの多数例で詳細なゲノム解析が行われたのは初めてであり、今回の研究成果が脳腫瘍の発生、進展に関わるメカニズムの解明や、治療法の開発につながることを期待します。治療の発展により、この病気で苦しむ患者さんたちが治ることを望みますし、私たちもそのようにできるよう今後も研鑽を積んでいきます」とコメントしている。
なお、この内容は「Nature Genetics」に掲載された。論文タイトルは、「Mutational landscape and clonal architecture in grade II and III gliomas」。