東大、重力に準ずる未知の相互作用が存在しうる範囲の精度を向上
2015年4月16日 19:22
東京大学の神谷助教らは、中性子とキセノン原子の散乱過程を世界最高となる精度で測定し、実験感度の範囲内で新しい相互作用は存在しないことを明らかにした。
重力は原子や電子などにとっては微弱な力であり、微視的スケールにおける検証実験はあまり多くなかった。近年、空間の余剰次元理論などを元とする理論が議論され、重力に準ずる未知の相互作用の存在を示唆する幾つかのモデルが提案され、微視的スケールにおける時空構造や重力理論の理解へ向けて、世界各国の研究所で実験的な検証が進められている。
今回の研究では、韓国原子力研究所内に設置されているHANARO研究炉の中性子散乱実験用ビームラインを用いて、中性子とキセノン原子の散乱角度分布を詳細に調べ、重力に準ずる未知の相互作用を、質量を持った新粒子が媒介すると仮定して評価を行った。その結果、2008年にNesvizhevkyらによって得られた結果と比べて、0.04ナノメートルから4ナノメートルのスケールにおいて、最大一桁ほどの改善に成功し、重力に準ずる未知の相互作用に対し、ナノメートルのスケールにおいて世界で最も厳しい制限を付けることに成功した。
今後は、より高強度の中性子ビームを用いて高感度の実験を行ない、探索領域を更に広げることが計画されている。
なお、この内容は「Physical Review Letters」(オンライン版)に20日に掲載される予定。論文タイトルは、「Constraints on New Gravitylike Forces in the Nanometer Range」。