福建省の化学工場爆発事故、収束宣言も住民から不安の声

2015年4月13日 08:35


*08:35JST 福建省の化学工場爆発事故、収束宣言も住民から不安の声
福建省ショウ州市の古雷港経済開発区内にあるパラキシレン(PX)プラントの爆発・火災事故で、発がん性物質を含む有毒ガスが周囲に拡散したことを受けて、地元住民の間では不安の声が高まっている。
6日に発生した化学火災は鎮火と再出火を繰り返し、発生から4日経過した10日未明にようやく収束したとされる。地元のショウ浦県政府は同日付で、避難住民に対して安全宣言を出し、帰宅を促した。ところが帰宅した住民からは、古雷鎮全域で依然として刺激臭が漂っているとの報告が相次いでいる。なかには嘔吐や眩暈(めまい)などの症状を訴える人も出ているという。このため、政府が用意した旅館などの避難場所に引き続きとどまる人や、いったん帰宅したものの、再び戻ってくる人が続出している。これに対し、同政府が「今後の宿泊費用は一切負担しない」と厳命したため、その対応を巡って、住民との対立が深まっている。複数の中国メディアが10日付で報じたもの。
こうしたなか、住民からは当局の安全宣言についても、「時事尚早」として信頼性を疑問視する声が出ている。また今後の事故調査報告に関しても、事故調査委員会が内部調査にとどめ、単純な化学物質漏れ事故として処理し、地元住民には真相を公表しないのではないかとの懸念が広がっている。
当局は事故発生後、古雷鎮の全住民に対し、半径5キロ圏外への退避命令を出した。住民1万4000人が工場から18キロメートル離れた地点まで避難したとの情報もある。
事故の経過を辿ってみると、今月6日午後18時56分(現地時間、以下同)、PXプラントから化学物質が漏れ出して火災が発生し、敷地内の中間貯蔵タンク区にある備蓄用タンク3件(607、608、610)に引火・爆発した。事故当時、607タンクには可燃性化学物質が2000立方メートル、608タンクには重質ナフサが6000立方メートル、610タンクには軽重改質液が4000立方メートルそれぞれ備蓄されていたとされる。
7日午前9時ごろに607タンクと608タンクが鎮火し、610タンクも午後4時40分までに消し止められた。ところが610タンクで同日午後7時45分に再び出火し、同午後11時40分に鎮火した。8日午前2時9分に今度は607タンクが再出火。608、610タンクから漏れ出した重質ナフサ、軽重改質液が607タンク内の残留物と混ざり、自然発火したとみられている。現場では当時、風速7級クラスの強風が吹いており、火が拡大した。607タンクはその後、8日午後8時45までに鎮火している。
一方、8日午前11時5分には、この3つのタンクとは別の609タンクでも、新たに火災が発生している。同タンクには軽重改質液1500トンが備蓄されていた。609タンクの火災は10日午前2時57分に鎮火したとされる。
目撃証言などによれば、爆発・火災事故の直後、周囲40~50キロメートル圏内で強烈な震動が約45秒ほど続いている。現場付近では激しい火災が起こり、大量の黒煙が上空に立ち上った。これまでに14人が負傷し、うち2人が重傷だという。
PXは発がん性物質のため、消火活動には、地元消防隊430人のほか、人民解放軍の化学防護隊120人、洗浄車5台などが投入された。また南京軍区175医院の専門家数人も現地入りしている。有毒ガスの発生を受けて、付近の住民1万4000人が工場から18キロメートル離れた地点まで避難したとの情報もある。工場内には砂袋5万個、消火薬剤40トンが運び込まれたほか、工場の外にも消火薬剤614トンが準備されているという。
古雷港経済開発区のPX工場は年産能力80万トン。13年7月にも爆発事故を起こしている。PX工場の建設を巡っては、中国各地で住民による反対運動が激化してきた。07年以降、住民らの激しい抗議活動を受けて、福建省廈門市や遼寧省大連市、広東省茂名市で地元政府が計画見直しに追い込まれた経緯がある。
芳香族化合物のPXはテレフタル酸の原料。テレフタル酸はポリエステル、PET樹脂の中間原料となる。
中国のPX生産拠点は、山東省青島、浙江省寧波、上海、新疆ウイグル自治区ウルムチ、江蘇省南京、河南省洛陽、天津、遼寧省遼陽、海南洋浦半島、福建省の泉州とショウ州、広東省恵州、江西省九江など13地域に点在する。中国のPX需要は12年に世界最多の1385万トンまで拡大。13年は需要が1641万トンに膨らむなか、自給率は47%に低下した。さらに14年は1766万トンに上る総需要のうち、51%に相当する908万トンを海外輸入に依存した。

【亜州IR】《ZN》

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