袴田巌・元死刑囚の釈放から1年、「拘禁症が癒えていない」、ドイツのジャーナリストが取材
2015年3月30日 11:39
【3月30日、さくらフィナンシャルニュース=東京】
1966年に静岡県の旧清水市で起きた強盗殺人事件で、死刑が確定した
袴田巌さん(79)は、静岡地裁が再審開始と死刑及び拘置の執行停止を決定し、東京拘置所から釈放されて27日で1年が過ぎた。
この袴田さんに今まで4回ほど取材した外国人がいる。ドイツ人の若き女性ジャーナリストのリーナ・シュナーブルだ。日本ジャーナリスト会議(JCJ)国際部は日本語ができるリーナさんなどの話を聞く会を先だって開いた。
リーナさんは英字新聞「ジャパンタイムズ」で報じられた袴田さんの記事を読んで、48年間も獄中にいたことに驚き、袴田事件を調べる決意をした。「袴田巌さんを救う会」の門間幸枝副代表の紹介で、袴田さん本人に取材することができた。現在も取材中で、事件全体を把握できていないが、袴田さんの拘禁症はいまだに続いているという。
「姉の秀子さんによると、袴田さんはこの4階建ての自宅(秀子さんの家)は、?全能の神?に守られているので、安全だが、外に出ると危険だという意識が強いという。秀子さんは拘禁症が癒えていないのですと言っていた」(リーナさん)
拘禁症は、刑務所などで自由を拘束された状態が続いた場合に生じる精神障害の一種。幻覚、妄想などさまざまな症状があらわれる。袴田さんは、死の恐怖と長年、闘ってきただけに、簡単に拘禁症は治らない。
ただ、「表情は明るくなってきた」というのは、同じく袴田さんを取材するジャーナリストの青柳雄介さんだ。知り合いのリーナさんが話すというのでこの日、参加した。
青柳さんがこう言った。
「8年ほど前、秀子さんを取材したことがあります。それで釈放後の弟さんの生活を取材させてほしいと秀子さんに頼みました。元気になってきているなと感じています。趣味の将棋は本当に強い。取材でやってきた記者や支援者などを相手にしていますが、この3月までは100戦以上闘い全勝でした。私も10敗していたが、最近やっと勝ちました。11戦目で初の勝利。
その時、袴田さんは盤面をじっと見つめ、?これは負けたな?とつぶやき、投了した。もう1回やろうと言ったが、袴田さんに用事ができて止めた。将棋は子どものころからやっていたそうで、未決囚の時、拘置所で腕を磨いた。死刑が確定してからは、教則本を読んでさらに力をつけた」
将棋は拘禁症を和らげる効果があるそうだ。
袴田さんは東京高裁で続く再審請求の審理は続いているので、「死刑囚」のままである。このため選挙権はなく、拘束期間に応じて支払われる刑事報償もなく、元死刑囚が未納の保険料を支払えば年金がもらえる特例法の対象にもなっていない。裁判で無罪を早く確定してほしい。(橋詰雅博・フリーのジャーナリスト、元日刊ゲンダイ記者)【了】