東京・江東区がサテライト方式保育園開設。コンセプトは施設ではなく“住まい”。設計・施工は積水ハウス

2015年3月29日 17:02

 東京都江東区では、大規模マンション建築などに伴う人口流入で乳幼児人口も増加。保育需要が急激に増え続け、待機児童への対策が課題となっている。その都市部における待機児童対策として、全国初となったサテライト型保育園施設の第2弾「江東湾岸サテライト・スマートナーサリースクール」が、この4月1日に開園する。メインとなる本園を設置した場所は2020年「東京オリンピック」開催の中心地となる江東区・有明で「テニスの森キャンパス」として設置、分園を江東区・東雲のイオンモール内に「東雲キャンパス」として置く。

 同保育園は0歳児から小学校入学前までの定員児童271名(本園/222名、分園/0歳・1歳児のみ49名)の保育・教育を行なう。2歳以上の園児は東雲キャンパスに集まってから、テニスの森キャンパスへ専用のEV(電気自動車)バスで送り迎えする。利便性の高いイオンモールの保育園「東雲キャンパス」に一旦集合してから開放的で明るい有明のキャンパスまで通園するというサテライト方式・仕組みを採用した。

 運営するのは社会福祉法人の高砂福祉会で、東京や千葉を中心とする首都圏や札幌市で23施設を運営する。同法人では「江東湾岸サテライト・スマートナーサリースクール」を施設ではなく“住まい”というコンセプトのもとで運営し、「世界に誇れる保育を発信」するという。

 「江東湾岸サテライト・スマートナーサリースクール」の設計・施工を担当したのは積水ハウスで、日常のなかでエコな保育を受けられる設備とし、災害緊急時には災害から子供たちを守り、被災後の園児たちを支える設備・施策を網羅した保育園になった。ここに“スマート” ナーサリーたる所以がある。

 「日常的なエコハウスとしての取り組みは、積水ハウスの住宅建設で培ってきた技術をほぼすべて導入した。“住まい”というコンセプトで練り上げた保育園にまさにぴたりと寄り添うものができた」と積水ハウス取締役 専務執行役員の平林文明氏。複層ガラス+断熱サッシの採用などで次世代省エネ基準の戸建て住宅と同等の断熱性能を実現。0歳と1歳児の部屋は床暖房が完備、LED照明、自然素材を多用し、空気清浄システム、太陽光発電やHEMSも備え、屋上緑化などで環境にも配慮した。

 災害時への対処のための施策も充実している。積水ハウスの耐震、耐火構造に加え、災害時のエネルギー確保も準備万端といえる。太陽光&風力発電はいうまでもないが、駐車場にはEV用の充電器を2基設置してあり、停電時には常に満充電された保育園の社用車のEVや送迎用EVバスから保育園に給電もできる。また、園の庭先に設置した桟橋に船舶を停泊させ給電できるシステムも導入した。3基の雨水タンク(合計600リットル)は、断水の場合のトイレ洗浄などに利用する。

 これら施策は、江東区と高砂福祉会のほかに、積水ハウス、通園専用電気バスを運行する日の丸自動車興業、緊急時に船舶運航を担う国立海洋大学と東京湾クルージングの6組織が「江東湾岸サテライト・スマートナーサリースクールの付加機能に係る教育、普及活動に関わる協定書」を締結し運営にあたる。つまり「このスマートナーサリーに通う子供たちに一貫してエコな生活を教え、環境に配慮する心を育てる」という。

 開園式で江東区の山崎孝明区長は、「区長に就任した平成19年、区の人口は44万人だった。それが、まもなく50万人に達する。私が区長に就任する以前、区への急激な人口流入を抑えるためにマンション建設を規制していた時期もあった。が、私は人口の多さは区の元気につながると思っている。人口増による待機児童解消のために“意欲”“スピード”“思いやり”で、毎年1000人の保育園枠を増やす。江東区で発明した“サテライト方式”は大都市を中心に有効な方策だ」と述べた。(編集担当:吉田恒)

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