相次ぐ非正社員の賃上げ、正社員との格差は縮まる傾向なのか
2015年3月29日 16:58
2015年春闘では、大手自動車メーカーや大手電機メーカーで、前年を上回る正社員のベースアップが相次いだ。不景気と言われながら、少しずつでも基本給が上がることは、なんともうらやましい話しである。正社員のベースアップに関しては、大手であればどこかが必ず毎年行っているものだ。外野の関心も、今年はどこの企業が行ったのか程度ではなかっただろうか。
しかし、15年は大手がさらに契約社員やパートなど、非正社員の賃上げに着手した動きも目立ったのだ。
どの業界も、人手不足が叫ばれて久しい。そのような中で、非正社員とした働く人も大切な人材である。不安定かつ低賃金であるがゆえに、離職率が高いという問題を抱えてきた。大丸松坂屋百貨店<3086>では、従業員の約4分の1にあたる約1500人の契約社員らを対象に、月額一律1千円のベースアップを実施する。これは、大丸と松坂屋が07年に経営統合して以来、初めてのことである。
同社では正社員のベースアップは要求されていない。同社労働組合の書記長は、「待遇の低い契約社員を優先した」と話す。対象者からは「賃金が上がることで士気が高まる」と喜びの声が多いという。
また、KDDI<9433>は契約社員約3600人に対し、平均で月額4800円の引き上げを回答。正社員の引き上げは2700円にとどまった。同社の広報担当者は「正規社員との格差是正が社会的要因となっていたから」と説明する。流通・サービス業界では、時給を20~40円引き上げるという回答が目立った。
このように、非正社員の賃上げが広がりを見せていることに対し、甘利明経済再生相は「非正社員の賃上げが昨年を上回る可能性がある」との見解を示した。その一方で「経済の好循環を確実にするために、政労使会議を近く開催し、引き続き賃上げの拡大などを要請する」と語った。政府が春闘に関与することは好ましくないとしながらも、現時点では「今年、来年、その先もずっと賃上げが景気の好循環を後押ししていくサイクルに入れるよう環境整備していく」とも語る。非正社員の賃上げが継続され、正社員との格差は縮まっていくのか。今後の動きに注目していきたい。(編集担当:久保田雄城)