中国タイヤメーカーが過剰生産で苦戦、在庫2割増で推移
2015年3月26日 11:26
*11:26JST 中国タイヤメーカーが過剰生産で苦戦、在庫2割増で推移
中国のタイヤ業界は厳しい経営が続いている。中国橡膠工業協会の統計データによ
ると、同協会タイヤ分会に所属する国内主要メーカー47社の売上高は14年上期に、前
年同期比3.5%減の974億1000万人民元(約1兆8770億円)に低迷した。減収率は13年
通年の0.9%から拡大している。過剰生産で供給がダブつくなか、製品価格は年初か
ら約15%下落。原材料価格を上回るペースで値下がりし、メーカー各社の採算が悪化
している。
中国のタイヤ業界は、数年前から過剰生産問題に直面。主要メーカーの設備稼働
率は平均で80%前後、中小メーカーに限ると70%以下にとどまる。需給バランスの改
善に時間がかかるなか、上述の47社が抱えるメーカー在庫は金額ベースで185億4000
万人民元に達した。前年とほぼ同水準となっているものの、製品価格の下落を考慮す
れば、数量ベースでは2割ほど在庫が積み上がっている状況という。
輸出も低調。輸出量は14年上期に18.2%増加したものの、輸出額は1.2%減少して
いる。輸出価格が約20%下落したことが背景。低価格タイヤの輸出が増えるなか、貿
易摩擦のリスクも高まっている状況だ。中国のタイヤ業界は輸出依存度が高く、生産
量の43%が輸出されている。
なお、13年通年の実績を見ると、主要メーカーの売上高は前年比0.9%減の2112億
6000万人民元にとどまった。メーカー在庫は2.4%減の160億人民元。輸出量は9.4%
増の1億6500万本、輸出額は2.0%減の756億8000万人民元だった。
こうしたなか、業界大手による海外M&Aが伝えられた。中国国営化学メーカー大手
の中国化工集団公司は23日、タイヤ生産で世界5位の伊ピレリを買収すると発表し
た。ピレリ筆頭株主のカムフィンと合意している。全額出資ゴム会社の中国化工橡膠
公司を通じ、今年第2四半期をめどにカムフィンの保有するピレリ株26.2%を取得す
る考え。1株当たり15.00ユーロに設定した。年内の完全買収を目指す。残余株に関し
ても、株式公開買い付け(TOB)ですべてを取得する構え。
今回の買収額は中国製造業で過去最大の71億ユーロ(約9280億円)に膨らむ見込
み。M&Aを活用することで、世界上位のタイヤ生産業者に躍進する構えだ。傘下の風
神輪胎(風神タイヤ:600469/SZ)などを活用して、中国化工橡膠は経営規模の拡大
を進めている。風神タイヤは14年末に親会社のタイヤ関連資産を買収。国内で足場を
固めたうえで、海外マーケットに打って出る方針を示していた。すでに欧州と米国に
は、販売子会社を設立している。商業タイヤ事業は風神タイヤに集約する方針。商業
タイヤの生産規模は倍増する見通しだ。
自動車市場が世界最大規模に成長した中国では、各メーカーが競ってタイヤ増産
を進めている。このなかで風神タイヤは、他を圧倒する地位を業界内で確立すること
となる。ある統計によると、中国のタイヤメーカーは中小を合わせて合計約550社。1
社当たりで毎年、平均160万本を生産中だ。ただ、業界の集約度は低い。上位の大手
10社を合わせた国内シェアは3割に過ぎない。一方、世界ではブリヂストン(5108/東
証)やミシュラン、グッドイヤーなどが圧倒的な存在感を示す。これらトップ3の世
界シェアは合算で46%にも達している。
【亜州IR】《ZN》