NTTなど、ダイヤモンド中の電子スピンの寿命を10倍に

2015年3月25日 23:23

 NTT・NII(国立情報学研究所)・大阪大学・NICT(情報通信研究機構)による共同研究グループは、ダイヤモンドの中に閉じ込められた電子スピンに超伝導磁束量子ビットを結合させることで、ダイヤモンド中の電子スピンの寿命が約10倍に伸びることを明らかにした。

 近年、既存のセンサの感度と空間分解能を上回る「量子センサ」を実現するための研究が、世界中で行われている。特に、ダイヤモンド中の電子スピンは、マイクロ波の印加によりその方向を制御して量子的な重ね合わせ状態を生成することができること、光を照射することで方向の読み出しもできること、長寿命であること、数十ナノメートルという極小ダイヤモンドで電子スピンを作ることができることなど、多くの利点があり量子センサへの応用が期待されている。しかし、ノイズが存在する環境下では寿命が短くなるという欠点があった。

 今回の研究では、100マイクロ秒程度の寿命を持つダイヤモンド中の電子スピンと10マイクロ秒程度の超伝導磁束量子ビットを結合させるハイブリッド化によって、電子スピンの寿命が約10倍となる950マイクロ秒にまで長くなることを明らかにした。

 さらに、研究グループは、炭素のあるべき位置に置き換わった窒素と、炭素が抜けてできた空孔との対から構成されるNV中心が持つ2つの励起状態のうち、片方の励起状態は量子ビットと結合するためにエネルギーシフトが起きるが、もう片方の励起状態は量子ビットと結合しないために、エネルギーに変化が起こらず、エネルギー差が生じて、低エネルギーのノイズからの影響を受けづらくなるために寿命が向上するというメカニズムを示した。

 今後は、人や動物の脳の活動情報を高い精度で読み取って病変を特定することや、数十ナノメートル程度の極小物質の三次元構造を明らかにすることなど、医療分野・材料工学分野に貢献すると期待されている。

 なお、この内容は3月23日に「Physical Review Letters」に掲載された。

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