資産運用における、「元本保証」の考え方・捉え方 (小林あや/フィスコアナリスト)

2015年3月17日 14:31


*14:31JST 資産運用における、「元本保証」の考え方・捉え方 (小林あや/フィスコアナリスト)
フィスコアナリスト、小林あやによる「ゼロからはじめる資産運用の基礎知識」-

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シリーズ第4回のテーマは、「元本保証」です。元本保証って魅力的ですよね。資産

の元本が保証されるわけですから、名目上の資産の減少を心配する必要はありませ

ん。人間誰しも、失敗は嫌なもの。できれば安全・安心地帯にずっといたい、その気

持ちよく分かります。ですが、私がまだ新人営業マン時代に遭遇したあるご婦人は、

ある意味で元本保証にこだわらない方でした。今回はその方のエピソードをご紹介し

ましょう。

そのご婦人は、75歳を超えているご高齢の方でした。当時私は、新人営業ウーマンと

して、与えられた自分の担当地域を一件ずつご訪問する飛込み営業を行っていたので

すが、ご縁があってそのご婦人と巡り合いました。初めて商品をご提案する段階にな

り悩んだあげく、ご年齢のこともあったのでリスクの低い「債券」をお勧めすること

にしました。ちょうど、「個人向け国債」が発行されはじめた時期でもあったからで

す。

提案商品を決めた私は、資料を用意してご訪問しました。個人向け国債という金融商

品の内容、メリットとデメリット、利率の決まり方や中途解約や経過利子の仕組み、

利息の受け取り方法から税金まで、一通り漏れのないようにしっかりと時間をかけて

説明しました。ご婦人は私の話を、うなずきながら聞いて下さいました。そして、い

ざ約定(やくじょう)を頂くため購入意思の確認をしたところ、驚きの答えが返って

きました。「国債は嫌なのよ」。

一瞬意味が分かりませんでした。説明の仕方が悪かったのだろうか、もっと時間をか

けて説明することが必要なのだろうか、いろんなことが頭をぐるぐる回りましたが、

理由はこうでした。「私はね、国債が紙くず同然になった経験があるんですよ」。

(昭和21年10月の「戦時補償特別措置法」公布により、部分的ながら国内債務不履行

が事実上強行されたそうです)

商品知識に関する研修では、国債は国が元本の支払いを約束するもので、非常に安全

性が高いと学んでいました。また、経済状況が落ち着いている今の時代、国債が債務

不履行になる可能性は非常に低く(財政赤字の膨らみから国債の債務不履行を心配す

る声も一部にはありますが)、そういう意味においては元本保証に近い商品性だと何

度もご説明しましたが、結局首は縦に振ってもらえませんでした。

そのご婦人にとっては、国債は元本保証同然の魅力を感じられない商品、という位置

づけになっていたんですね。結局、ヒアリングを十分に重ねた結果、個別株への投資

となりました。

ちょっと極端な例かもしれませんが、何がリスクで何がリスクでないかは、その人の

考えによります。残念ながら、預金ですらペイオフ解禁で全額保証とはなっていませ

ん。資産のある方からすれば、1金融機関で元本1,000万円とその利息まで「しか」保

証されない、ということになります。また、前述の国の財政赤字に関しては、最近

NHKでも「預金封鎖」に関する特集が報道されるなど、世の中では財政悪化懸念への

関心も高まりつつある状況のようです。

さて、そのご婦人ですが、なぜ個別株への投資にしたか、その理由は気になりません

か?答えはこうです。「リスクを限定すると、増やすチャンスも失うことになるんで

しょう?そんなの勿体無いじゃない?」

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