中国、新世代ロケット「長征五号」を初公開

2015年3月12日 15:00

 中国航天科技集団公司は3月11日、中国の新世代ロケットのひとつである「長征五号」の姿を公開した。これまで想像図や模型などは公開されていたが、実機が公開されたのは初めてのことになる。長征五号は地球低軌道に最大25t、静止トランスファー軌道に最大14tの衛星を打ち上げることができる能力を持ち、宇宙ステーションのモジュールや大型の月・惑星探査機などの打ち上げに使うことが計画されている。

 中国は現在、長征二号、三号、四号に代わる、新しい長征ロケット・シリーズとして、長征五号、六号、七号、九号、十一号を開発している。このうち長征五号、長征六号、長征七号はモジュラー式を採用しており、それぞれの第1段やブースターの各機体に設計を共通化したものを使うことで、信頼性の向上やコストダウンを図っている。

 長征五号は、大型の人工衛星を中心に、有人宇宙ステーションのモジュールや、月以遠に探査機や宇宙船を打ち上げられる能力を持つ。またブースターの装着数の違いや、第2段を装備するか否かで打ち上げ能力を柔軟に変えることができ、その構成ごとに長征五号甲、乙、丙、丁といったヴァリエーションが用意されている。打ち上げの能力は地球低軌道に最大で25t(長征五号乙)、静止トランスファー軌道には最大14t(長征五号E)で、欧州のアリアン5やロシアのプロトン、アメリカのデルタIV、アトラスV、ファルコン9、また日本のH-IIBなどと対抗する機体となる。

 今回公開されたのは長征五号乙で、K3-1ブースターを4基持ち、第2段を搭載しない、宇宙ステーションのモジュールなど、地球低軌道への大質量の衛星の打ち上げに特化した機体である。全長は約54m、コア部分の直径は5.2mで、地球低軌道に25tの打ち上げ能力を持つ。また現在、新しい宇宙ステーションの「天宮二号」の開発が進められており、今回公開された長征五号乙を使って打ち上げられるものと考えられる。

 長征五号の第1段には、液体酸素/液体水素を使用するYF-77ロケットエンジンが2基装備され、その周囲に液体酸素/ケロシンを使用するYF-100ロケットエンジンを持つブースターを装備する。またブースターにはK3-1とK2-1の2種類があり、K3-1のほうが大きく、YF-100ロケット・エンジンを2基装備しており、一方のK2-1はYF-100を1基のみ装備する。これらの装着数などを変えることで、打ち上げたい衛星に、より柔軟に合わせることが可能となっている。

 YF-100は二段燃焼サイクルを採用したエンジンで、ソヴィエト連邦で開発されたゼニート・ロケットの第2段ロケット・エンジンRD-120を参考に設計されたものであるといわれている。RD-120は非常に高度な技術で造られており、仮に実物が目の前にあったとしても、そう簡単にコピーできるものではない。コピーできたという事実は、それだけで中国のロケット技術の高さを示している。また、RD-120が推力約833kNであるのに比べ、YF-120は約1,340kNと大きく向上しており、別のエンジンも参考にしたか、あるいは中国独自の技術が入っているものと思われる。

 第2段には液体酸素/液体水素を使用するYF-75Dロケットエンジンが2基装備される。ただ今回公開された長征五号乙のように、地球低軌道への大質量の衛星の打ち上げなどでは、第2段は使用されない場合もある。

 また、K3-1、K2-1ブースターを組み合わせることで、小型ロケットの長征六号と、中型ロケットの長征七号も造られる。今のところ、まずは小型の長征六号が今年中に打ち上げられ、それに続いて2016年4月に長征七号が、また2016年中に長征五号の打ち上げが予定されている。

 この新型長征ロケットの開発と並行して、文昌衛星発射センターの建設も進められている。文昌衛星発射センターは酒泉、太原、西昌の各センターに続く、中国にとって4か所目の宇宙基地で、「中国のハワイ」として有名な海南島に造られている。現在、すでに打ち上げに必要な施設は一通り完成しているという。

■新一代运载火箭长征五号组装完毕整体亮相_中国航天科技集团公司
http://www.spacechina.com/n25/n144/n206/n133097/c869924/content.html

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