東大、アゲハチョウ2種のゲノムを解読 毒蝶に似せる擬態の原因遺伝子を明らかに
2015年3月12日 12:57
東京大学の藤原晴彦教授らによる研究グループは、シロオビアゲハとナミアゲハの2種のゲノムを解読し、シロオビアゲハの雌が翅の紋様などを毒蝶のベニモンアゲハに似せて捕食者から逃れる擬態(ベイツ型擬態)の原因遺伝子や分子機構の一端を明らかにした。
シロオビアゲハは、毒蝶であるベニモンアゲハに紋様や行動を似せて捕食者をだますベイツ型擬態をすることで知られており、ナミアゲハは、蝶の視覚、味覚、隠蔽型擬態など多様な現象を理解するための実験材料として広く使われている。
今回の研究では、これら2種のアゲハチョウのゲノムを完全に解読することに成功し、シロオビアゲハのゲノムは2.27億塩基対、ナミアゲハは2.24億塩基対で、オオカバマダラなど他の蝶とは同程度の大きさであることが分かった。
また、シロオビアゲハの雌の擬態型(優性:H)とシロオビアゲハの雌の非擬態型(劣性:h)の全ゲノム配列を比較したところ、両者の配列が大きく異なる領域が常染色体上に1か所だけ見つかり、そこには性分化を制御すdoublesex(dsx)という遺伝子が主に存在し、この領域では染色体の並びが逆転する現象が起きていることも明らかになった。さらに、新たに開発した遺伝子導入技術などから、擬態をするシロオビアゲハの擬態型dsxのメッセンジャーRNAが翅の紋様などの擬態を生じさせることがわかった。
今後は、明らかになったゲノム情報が多様な基礎研究や、食植性昆虫の防除・生育制御に役立てられると期待されている。
なお、この内容は3月9日に「Nature Genetics」に掲載された。