中国の「7%成長」は低成長なのか?

2015年3月9日 08:00


*08:00JST 中国の「7%成長」は低成長なのか?
中国は先週開幕した全国人民代表大会で、2015年の経済成長率の目標を「7%程度」とした。これを受けて日本では、「中国の経済減速が鮮明となった」とか「中国が一段と苦境に陥った」等の報道がなされている。まるで中国が景気後退(リセッション)に陥ったかのようなトーンだ。確かに、従来の最盛期の10%超の成長からすると「7%程度」は一見大きな鈍化にみえる。
 しかし、中国の国内総生産(GDP)は2010年に約500兆円の日本を抜いた後、わずか3、4年で約1000兆円と日本の約2倍になっている(その間の経済成長率は7.8%~10.5%)。1000兆のGDPがさらに7%成長すると70兆円増えて1070兆円になる。70兆円の増加分は今なにかと話題のギリシャのGDP約20兆円の3倍強だ。つまり1年で中国国内にギリシャ3個分の経済が新たに誕生することと同じである。成長率が鈍化したといって大騒ぎするのは実態を見誤る可能性がある。規模(スケール)が全く違うのである。
 日本の高度成長期も10%超の成長を遂げていたが、石油ショック後バブル崩壊までは5%程度の安定成長となっていた。今回の中国が打ち出した7%程度というのはちょうどその真中辺りである。中国は成長の量より質を目指す「新常態」として安定成長を目指す方針としている。
 それにしてもすでに約1000兆円の規模になった中国が7%で成長して行くというのは「低成長」ないし「中成長」なのだろうか。このまま行くと簡単に米国を抜いて世界一の経済大国になる。
 かつてBRICs(ブリックス。ブラジル、ロシア、インド、中国の頭文字)という言葉が流行ったが、中国・インドとロシア・ブラジルでグループは完全に二極化した(インドの成長率は7%台半ばに達し中国を抜く可能性も)。中国とインドはその10億人という膨大な人口を背景とした中長期的な成長余力が大きい。先進国の基準では現在も国民の大多数は低所得者層に分類されるが、20億人の相当な部分が中産階級になった時の世界経済に与えるインパクトは、ギリシャ問題がごく小さなことのように思えるほど計り知れないものがある。ロシアやブラジルのような資源国の成長は中国・インドが成長して資源をどれだけ消費するかにかかっており、中国・インドの成長の従属変数にすぎない。
 最近、中国の春節の時期に中国人観光客が日本に大挙して押し寄せ、「爆買い」をしたことがしきりに報道されたが、これは円安やビザの緩和だけが原因ではない。中国の経済成長により購買力が増した中国人が世界中で買い物をし始めている現象の一環なのである。
 今後も経済発展にともなう賃金の上昇により中国人は購買力を高め、かつての世界の工場としての生産地から消費大国としての色彩を強めて行くだろう。そうすると、かつての日本人がそうであったように、中国人の消費もより本格志向を高め、新興国向け商品では満足せず、高品質・本物を求めていくことになる。
 中国及びインドの経済成長は今後の世界経済の行方を占う最も重要な要素だ。マーケティング面だけではなく、あらゆる面で日本経済にも大きな影響を及ぼしてくることから、常に注視しておく必要がある。《YU》

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