協力行動の背景に「罪悪感」 NICTが脳の前頭前野の機能を解明

2015年2月28日 10:42

 情報通信研究機構(NICT)の春野雅彦主任研究員らによる研究グループは、脳の前頭前野が相手の期待を裏切る程度である「罪悪感」を表現し、扁桃体が相手と自分の取り分の差の大きさである「不平等」を表現していることを明らかにした。

 ヒトの協力行動において、近年までは「自分の取り分を増やしたいと活動する古い脳(皮質下)の働きを、理性的な新しい脳(前頭前野)が抑制して協力が生じる」とする説が有力であったが、2010年に春野主任研究員らはこれまでの説が必ずしも正しくないことを示していた。

 今回の研究では、機能的MRI(fMRI)実験と経頭蓋直流電流刺激によって、大脳皮質の高次認知機能の中枢である前頭前野の活動が「罪悪感」を表現し、皮質下の原始的な領域である扁桃体の活動は「不平等」を表現することを証明した。これは、進化的に異なる新旧の脳領域がヒトの協力行動において異なる機能を担うことを意味している。

 今後は、ヒトに固有な大規模な社会やコミュニケーション能力が進化したメカニズムの理解や社会認知と深く関係する発達や精神疾患の類型化に貢献すると期待されている。

 なお、この内容は2月25日に「The Journal of Neuroscience」に掲載された。

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