日立、量子コンピュータに匹敵する性能の新型コンピュータを開発

2015年2月23日 15:38

 日立製作所は23日、約1兆の500乗通りの膨大なパターン(組み合わせ)から適した解を導く「組み合わせ最適化問題」を量子コンピュータに匹敵する性能で、瞬時に解く新型コンピュータを試作したと発表した。

 今回開発した技術では、磁性体の振る舞いを、最適化問題を解くための物理現象として利用する。具体的には、解くべき最適化問題を、+1と-1の2つの状態を取る強磁性体スピンが隣接するスピン間で相互作用する振る舞いを示すイジングモデルで表現し、半導体メモリ技術を用いて実装した。半導体回路技術を用いることで、室温動作が可能で、半導体の微細化による大規模化が容易になった。さらに、半導体チップを多数並べることで問題規模に応じたシステムの大規模化が可能だ。

 また、量子アニーリングで解を求めていたイジングモデルの振る舞いを、半導体CMOS回路上で擬似的に再現するCMOSアニーリング技術を開発した。この技術では、外部から特殊な回路を経て入力されるノイズを利用し、特定の局所解への固定を防ぐことで、より良い解を求めるアニーリング動作を半導体回路上で実施できるようになった。

 日立では、これらの技術と65nmの半導体プロセスを用いて、20,480パラメータを入力可能なコンピュータの試作機を開発し、実証実験を行った。その結果、システムが室温で動作することを確認するとともに、現在の量子アニーリングを用いた量子コンピュータのパラメータ数512の40倍となる20,480パラメータの大規模な組み合わせ最適化問題を数m秒と瞬時に解けることを確認し、さらに従来のコンピュータを用いて解く場合と比較して電力効率約1,800倍を実現することを実証した。現在の最先端の半導体プロセス(14nm)を用いれば1,600万パラメータに対応するチップに大規模化することも可能となる。

 同社は、この技術を活用することで、個別最適から全体最適まで行うシステムを構築し、さらに大規模・複雑化する社会インフラの課題を解決する社会イノベーション事業を推進するとしている。

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