主力株かモメンタム株か?直近の東証第1部直接上場株をターゲットに「第3の道」に活路=浅妻昭治

2015年2月16日 11:17

<マーケットセンサー>

 マーケットには「クジラ」が棲息し、「イナゴ」が跋扈している。「クジラ」とは、ETF(上場型投資信託)をせっせと買い入れている日本銀行であり、運用方針を見直したGPIF(年金積立管理運用独立行政法人)などで、「イナゴ」とは、かつて「ゴミ投資家」といわれた個人投資家の進化形で、ネット時代にあってはなかなかどうしてどうしてつどつど株価的な「炎上」を演出し底力をみせつけている。

 この2つの投資主体は、買い出動するタイミングも買い手掛かりの材料も、さらに買い対象銘柄も、「クジラ」が好むロット重視の主力株か、「イナゴ」がお気に入りの値動き優先のモメンタム株かまるで別々である。どちらの投資主体が元気かによって、相場全般のスケールや相場の方向がまったく逆になることも珍しくない。そのどちらのケースに振れるかによって困惑するのは一般投資家で、いずれの投資主体に追随するのが好パフォーマンスにつながるのか、あるいは追随した途端に高値でハシゴを外される心配はないかなどと迷わされることになる。

 2015年相場も、年初来1カ月半が経過したが、まさに一般投資家泣かせの展開となっているようである。投資主体として「クジラ」の方がやや元気があり、折からの円安・ドル高の進行、さらに3月期決算会社の相次ぐ業績上方修正もあって、主力輸出株中心の相場展開と期待して追随しようとしたところだが、案に相違してこれも出鼻をくじかれて急騰と急落が日替わりで繰り返されるまさに「鯨幕相場」に付き合わされ、足元では相場の方向性が明確化し、トレンド発生を実感するには至っていない状態である。これは多分、もう一つの強力な投資主体である外国人投資家が年初来、売り越しペースで推移していることと無縁ではないだろう。

 この展開は、本年相場がまだ決め打ちするにはリスクが大きいことを示唆しているはずだ。ではどう対処するか?第3の道を提案したい。「クジラ」にも「イナゴ」にも与せず、しかも両者に覚え目出度いはずの銘柄に狙いを定めるアプローチで、注目したいのは、2011年から2014年までの間に東証第1部に直接上場した銘柄である。

 実は、前週末13日大引け後にサントリー食品インターナショナル(サントリーBF) <2587> が、12月期決算を開示し、オープンハウス <3288> も、今9月期業績の上方修正と増配、自己株式取得、さらに鴻池運輸 <9025> も株式分割とそれぞれ好き材料を発表したが、この3銘柄は、いずれも一昨年2013年に東証第1部に直接上場された銘柄である。3銘柄の発表した好材料が、株価押し上げ材料となるかならないかは、週明けの株価反応を確認する必要がある。最近は、業績上方修正発表に増配や自己株式取得などが加わっても株価が下げる銘柄も出ているだけに予断を許さないが、3銘柄の株価が素直に歓迎高をすれば、直近直接上場株にも買いの連想が強まるとみられるからだ。

 東日本大震災が発生した2011年3月以来、東証1部に直接上場された銘柄は、18銘柄に達する。このうち6銘柄が、以前にいったん上場が廃止されたあとの再上場組で、また今年2月13日終値が、公開価格を上回っているか下回っているかでみれば、7銘柄が、公開価格を下回る負け組となっている。しかし直接上場株の実力これだけでは計れない側面を持っている。上場によって業界株価地図が様変わりとなっているケースが続出しており、時価総額ベースでは、西武ホールディングス <9024> は、東京急行電鉄 <9005> を抜いて私鉄業界トップとなり、JAL <9201> は、既上場のANAホールディングス <9202> を上回り、すかいらーく <3197> は、ファミレス業界第1位に位置するなど「クジラ」のポートフォリオからは外せない存在となっている。

 今年2015年の新規株式公開(IPO)市場は、昨年2014年の77社が、90社~100社に増加・続伸すると予想され、話題のIPO株として無料通話アプリのLINE、テーマパークのユニバーサルスタジオジャパン、家電量販店大手のヨドバシカメラなどのIPOも下馬評に上っているが、極め付きの大型上場は、日本郵政と東京メトロである。この民営化株IPOの「御用金相場」の前景気をつけるためにも、直近直接上場株の再人気化が想定されるところで、全17銘柄をスクリーニングして有望銘柄にアプローチしたい。(本紙編集長・浅妻昭治)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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