親子で過ごす時間が発達期の子供の言語発達に重要 東北大

2015年2月12日 11:26

 乳幼児に対する言語的働きかけ、反応や小児における親子の相互作用、特に言語のそれの量が、言語スキルや言語知識といった言語発達指標を長期的に上昇させることが数多くの横断心理学研究や縦断心理学研究により明らかにされてきた。一方、これまでの先行研究において健常の小児が発達の中期以降に神経回路の刈込みと呼ばれる現象が背景にあると考えられる灰白質量の減少を示すことが示されていた。また脳の上側頭回が、言語的理解や非言語的コミュニケーションの理解などに関わることも知られている。

 同様に、親による子供への言語的虐待や、親の虐待による心的外傷後ストレス障害(PTSD)、親の社会経済ステータスなどが子供の言語機能の低下と上側頭回の脳灰白質形態に影響を与えることも示されてきた。しかし、これらの言語機能と関連する領域の発達に、健常な親子における相互作用がどのような影響を与えるのかは明らかにされていなかった。

 東北大学加齢医学研究所・認知機能発達(公文教育研究会)寄附研究部門(川島隆太教授)は4日、MRI などの脳機能イメージング装置を用いて、健常小児の脳形態、脳血流、脳機能の発達を明らかにするとともに、どのような生活習慣が脳発達や認知力の発達に影響を与えるかを解明したと発表した。

 研究参加者は、一般より募集した、悪性腫瘍や意識喪失を伴う外傷経験の既往歴等のない健康な小児とした。これらの研究参加者は最初に TV 視聴を含む生活習慣などについて質問に答え、知能検査をうけ、MRI 撮像を受けた。この時点では研究参加者の年齢は5歳から18歳(平均約 1歳)に及んだ。これらの研究参加者の一部が、3年後に再び研究に参加し、再び知能検査とMRI撮像を受けた。

 まず解析に必要なデータが揃っている262名の初回参加時のデータを解析し、平日と休日に親子が一緒に過ごす平均時間と言語理解指数という標準的知能テストの四大因子の1つ、脳の局所の灰白質濃度の関連を解析した。次に解析に必要なデータが揃っている208名の初回参加時と2回目参加時のデータを解析し、初回参加時における平日と休日に親子が一緒に過ごす平均時間が、どのように各参加者の初回から 2 回目参加時の言語理解指数、脳の局所の灰白質濃度を予測していたかを解析した。

 これらの解析の結果、初回参加時における長時間親子で過ごすことは、初回参加時に高い言語理解指数と関連し初回参加時から数年後の2回目参加時へのより一層の言語理解指数増大につながっていたという。同様に初回参加時において長時間親子で過ごしていたことは、初回参加時の両側の上側頭回等の局所灰白質濃度の低さと関連しておりさらに初回参加時から数年後の2回目参加時への右上側頭回の発達性変化への負の影響(灰白質濃度の減少が少ないこと)と関連していた。

 また、言語理解指数や年齢は、上述の同定された領域と同様の領域において、局所の灰白質量と負に相関していたという。こうした関連のうち、心理的関連や縦断的変化に関しては、とくに小さい子供ほど親子で過ごす時間が長いことが影響するという証拠は得られなかった。さらに、親子で過ごしたさまざまな内容別の頻度の解析により親子でさまざまな内容の会話をより多くもっているという因子が親子で過ごす時間と同じような言語性理解指数や、右上側頭回の局所灰白質濃度の横断的関連と縦断的変化への関係を示すこともわかった。

 同グループでは、今回の成果より、小児において長時間親子で一緒に過ごすこと、とくに会話をもつことで、脳の言語機能に関わる領域が影響をうけ、これが長時間親子で一緒に過ごすこと、とくに会話をもつことによる言語機能発達の増加と関連することが示唆されたとしている。(編集担当:慶尾六郎)

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