【税理士・道下知子の税金相談室】(1)

2015年2月10日 12:10

【2月10日、さくらフィナンシャルニュース=東京】

■確定申告は税金を知るチャンス!

 皆さん、確定申告の時期がやってきました。

 確定申告は、サラリーマンの方々には、あまり馴染みはないかもしれません。なぜなら、会社から源泉徴収で毎月のお給料からすでに税金は天引きされています。また、その年の末に「年末調整」を受けることで、1年間の皆さんの所得に対する税金が精算されるので、基本的には確定申告をする必要がないからです。

 そのため、「税金のことは私には関係ないし、よくわからない・・・」と考える方もいらっしゃるでしょう。

 しかし、税金について本当にそのような考え方のままでいいのでしょうか?

■税金の仕組みを知れば「生活力」がUpする

 発想を転換させてみましょう。

 税金の仕組みを知ることは、私たちの生活で何気なく起こっている事象・・・「医者に通院し、医療費がかかっている」、「趣味が高じて、副業をはじめた」、「脱サラして、お店をはじめた」、「年金暮らしの両親に毎月お金を送金している」、「不妊治療をして、ようやく赤ちゃんが授かり、今産休中」、「マンションを買い替えた」、「離婚して慰謝料をもらい、すっきりした!」・・といったことに対し、かかる税金を安くすることができたり、事前に税金がかからないような工夫をする「知恵」がつく、ということなのです。

 これって、すごいことだと思いませんか?

 そう、税金は、私たちの生活に密着したものなので、しっかり知っておくと、とても役立つものなのです。

 もう、皆さんは「税金を知ろう!」という気持ちになられたと思います。そして、確定申告時期に突入している今こそ、確定申告にまつわる税金の仕組みを知ることで、皆さんの知恵もお金もアップすることができるチャンスが到来しているのです。

■安心して暮らせる社会は税金で支えられている

 別の視点から税金を知ることも大切です。

 私たちの社会は、様々な公共サービス----道路や公園、下水道、学校、病院など、目に見えるものから、警察や消防など国の治安を守ることや、教育や保健衛生、年金や福祉などの社会保障など健康で安心に暮らすための目に見えないサービスまで、「税金」によって支えられています。

 私たち国民が安心して暮らせる社会をつくるために、税金は、なくてはならないものなのです。また、国の主権者である私たち納税者が安心して社会で暮らすためには、国が正しく税金を使っているか、チェックをする必要があります。そのためにも、きちんと税金を知ることは、とても大切なことなのです。

 それでは、具体的に確定申告にまつわる税金のしくみを見てみていきましょう。

■確定申告しなければならない人、確定申告すると得する人

 さて、確定申告をする人とは、どんな人なのでしょうか?大きく分けて2つのパターンがあります。

 1、確定申告しなければならない人
 2、確定申告することにより、税金が返ってくるなどの得をするチャンスがある人

 まず、1の確定申告をしなければならない人とは、サラリーマンやOLの場合、「年収が2,000万円を超える人」、「給与以外の副業の所得が20万円を超える人」、「2か所以上から給与をもらっており、サブの給与が20万円を超える人」、「同族会社の役員などで、給与のほかに、その同族会社から貸付金の利子や資産の賃貸料などをもらっている人」、「災害減免法によって源泉所得税の徴収猶予や還付を受けた人」、「退職金をもらった場合、『退職所得の受給に関する申告書』を提出しなかったため、20.42%の源泉徴収をされていて、それが正しい税金の額よりも少ない人」などです。

 このような事項に該当する方は、きちんと確定申告しないとペナルティが科されるので、注意してください。申告や納税が遅れた場合には、年9.2%の延滞税が科せられますし、申告しなかったことを税務署に見つかった場合は、無申告加算税(税額の最大40%)を上乗せされることがあります。

 くれぐれもご注意を!

 一方、個人事業主、フリーランスなどの場合は、会社が源泉徴収し、年末調整してくれるわけではありませんから、基本的には確定申告することになります。具体的には、「その年に納税する税額がある人(所得から所得控除、税額控除を差し引いても税金が発生する場合)」です。その他、年金生活者の場合については、ここでは省略します。

■払いすぎた税金が返ってくるチャンス

 2のケースは、確定申告する必要がなくても、申告することにより、払いすぎた(源泉徴収された税金が多すぎた)税金が返ってくるチャンスがある人です。

 例えば、「1年間の医療費が10万円を超えた人(不妊治療や出産費用、メタボ健診の費用や介護保険のサービス費用----老人用おむつだって、医療費です)」、「ローンを組んでマイホームを買った人」、「ローンを組んでバリアフリー工事をした人」、「台風や地震、火災で住宅や家財の被害があった人」、「政党に寄付をした人」、「年の途中で退職して、まだ再就職していない人」、「ふるさと納税をした人」、「年末調整後に結婚した人」など、細かい適用要件はありますが、このような人は、税金が少しでも戻ってくるチャンスがあるので、これを見逃す手はありません。

 株や不動産取引で損した場合でも、確定申告をすれば、他の所得と相殺出来ますし、翌年以降の利益と相殺できる繰越控除も活用できます。このような方は、今こそ税金の仕組みを知り、チャンスをゲットしましょう。

 今回は税金を知ることの大切さという視点から、確定申告時期の突入にからめて、確定申告に関するお話しをしました。

 次回以後は、確定申告にまつわる「お助け・節税対策」を、サラリーマンやOLの場合と個人事業主やフリーランスの場合、そして両者に共通する場合にわけて、事例を用いてお話ししたいと思います。【了】

道下知子(どうげ・ともこ)
東京都出身。青山学院大学法学部私法学科卒業、同大学院法学研究科私法専攻博士前期課程修了。新日本アーンストアンドヤング税理士法人にて、税理士として十数年、様々な業界の中小企業を中心に、その会計・財務・税務分野に従事。その後、現在は、西武文理大学専任講師。税理士。日本簿記学会、税務会計研究学会に所属。

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