早大、中枢神経の再生阻害因子をまとめて抑制する方法を明らかに

2015年2月7日 19:02

 早稲田大学の大島登志男教授らによる研究グループは、細胞骨格を制御するタンパク質CRMP4を抑制することで、神経再生を阻害するいくつかの因子を同等にブロックできることを明らかにした。

 脳や脊髄からなる中枢神経系は、ひとたび損傷してしまうと非常に再生が起きにくく、例えば損傷した脊髄の場合、炎症・瘢痕形成・神経変性などの阻害反応がある。これまで、阻害反応一つひとつを制御する試みはなされてきたものの、全ての阻害反応を一挙に制御する分子の研究報告はなかった。

 今回の研究では、細胞骨格を制御するタンパク質CRMP4の遺伝子を欠損させたマウスを調べたところ、炎症・瘢痕形成・神経変性反応が抑制され、脊椎損傷により麻痺していた後肢機能が損傷から1週間後という非常に早期から改善していることが分かった。

 これまで同定されてきた阻害因子の多くは、他の組織にも影響力をもつため、強い副作用(実験動物における致死性など)が懸念されてきた。しかし、今回のCRMP4遺伝子欠損マウスは、野生型マウスと遜色なく正常に生育し、行動の異常は観察されなかった。このことは、CRMP4を治療標的にした場合の副作用が従来の治療に比べ明らかに少ないことを示唆している。

 今後は本研究成果が脳損傷・脳疾患に対する神経再生医療研究の貢献に繋がると期待されている。

 なお、この内容は2月5日に「Scientific Reports」オンライン版に掲載された。

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