後継者バンクは中小企業を救うのか

2015年2月4日 15:50

 現在日本の中小企業は350万以上ある。全事業所に占めるその割合は、実に99.7パーセントにも上る。しかしその数は年々減少しつつある。その理由は様々だ。価格競争力に負けた町工場もあるだろうし、大規模ショッピングモールができたことで立ちゆかなくなった小売店もあるだろう。そして今、中小企業を悩ませている問題が後継者不足だ。

 大学生が官公庁や大企業を志望する傾向は根強い。その結果優秀な学生はなかなか中小企業にやってこない。人材不足に悩む中小企業は今、経営者自身の高齢化を迎えている。現在小規模事業者の引退年齢は70.5歳。その背景には、後を託せる人材の不足がある。自分の代で工場を閉めよう、店を閉めようと考えている中小企業経営者も多いようだ。

 今回、政府が始めたのはそういった中小企業に人材を紹介する「後継者バンク」である。主に起業を考えている人が登録、中小企業の希望に応じて人材を紹介する仕組みだ。飲食店の起業が比較的簡単なのは、起業する人も廃業する人も多く、店舗や厨房機器などが安価に準備しやすいためだが、他の事業分野でもその流れが応用できると考えたのであろうか。経済的な負担が減れば、意欲やアイデアのある人が会社経営に乗り出しやすくなる。

 これとは別に、中小企業の事業が廃業により途絶えてしまうのを防ぐための、「事業引継支援センター」も拡大する。これは、事業の譲渡を考えている中小企業を大企業などに紹介するセンターで、現在は東京や愛知など、全国16カ所にある。2015年度のうちには、このセンターを47カ所に増やす予定だ。

 こういった試みが成功するかどうかは、起業を考えている人に、しっかりと魅力を伝えることが大切だろう。雇われない働き方に注目が集まる今、独立には一人で働くという道以外にも、事業を引き継ぐという道もあるということを、起業を考える人は知るべきだろう。

 一人一人の業務が幅広く、小回りがきくのが小規模事業所のメリットだ。この試みによって、中小企業にいい人材が集まれば、大企業にはない製品やサービスが生まれるのも遠い未来のことではない。(編集担当:久保田雄城)

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