中国の新型ロケット長征七号、地上総合試験を実施

2015年1月30日 15:18

 中国の新型ロケット、長征七号が1月26日、文昌衛星発射センターにおいて地上総合試験を実施したと、中国の各メディアが報じている。また長征七号の試験機が移動発射台の上に立てられ、移動している様子の写真も公開された。長征七号が完成した姿が披露されたのはこれが初めてとなる。

 中国は現在、長征二号、三号、四号に代わる、新しい長征ロケット・シリーズとして、長征五号、六号、七号、九号、十一号を開発している。このうち超大型ロケットの長征五号、小型ロケットの長征六号、そして大型ロケットの長征七号はモジュラー式を採用しており、それぞれ第1段やブースターの各機体を共有している。

 長征五号は、大型の人工衛星を中心に、有人宇宙ステーションのモジュールや、月以遠に探査機や宇宙船を打ち上げられる能力を持つ。第1段に液体酸素/液体水素を使用するYF-77ロケットエンジンを2基装備し、その周囲に液体酸素/ケロシンを使用するYF-100ロケットエンジンを持つ、K3-1とK2-1の2種類の液体ロケットブースターを装備し、またそのブースターの構成を変えることで多種多様な衛星の打ち上げに対応することができるようになっている。第2段には液体酸素/液体水素を使用するYF-75Dロケットエンジンが2基装備される。なお第2段は使用されない場合もあるという。

 設計思想としては日本のH-IIAロケットや、欧州のアリアン5ロケットと同じく、両脇のブースターを実質の第1段、中央のコア・ステージを実質の第2段としている。

 地球低軌道に最大25t、静止トランスファー軌道には最大14tの打ち上げ能力を持ち、欧州のアリアン5やロシアのプロトン、アメリカのデルタIV、アトラスV、ファルコン9、また日本のH-IIBなどと対抗する機体となる。

 前述のように、長征五号にはK3-1とK2-1と呼ばれる2種類のブースターが用意されているが、K3-1のほうが大きく、YF-100ロケット・エンジンを2基装備しており、一方のK2-1はYF-100を1基のみ装備する。これらを組み合わせることで、打ち上げたい衛星に合わせて長征五号の打ち上げ能力を変えることができるようになっている。

 YF-100はケロシンと液体酸素を推進剤とするエンジンで、二段燃焼方式を採用し、推力は約120t(約1,180kN)という極めて高い数値を誇るとされる。もともとはソヴィエト連邦で開発されたゼニート・ロケットの第2段ロケット・エンジンRD-120をコピーしたものだといわれているが、RD-120はかなり高度な技術で造られており、仮に実物が目の前にあったとしても、そう簡単にコピーできるものではない。コピーできたという事実は、それだけで中国のロケット技術の高さを示している。

 長征七号は、第1段にK3-1を使い、その周囲にK2-1をブースターとして装着することで構成される。第2段にはYF-115ロケットエンジンを4基持つ。YF-115は推力15t(147kN)ほどのケロシン/液体酸素エンジンだ。また2基のYF-75Dを持つ第3段を追加でき、静止トランスファー軌道や月探査機などの打ち上げにも使える。YF-75Dは現在長征三号シリーズの上段として使われている液体酸素/液体水素エンジンYF-75の改良型とされる。

 打ち上げ能力は、地球低軌道に13.5t、太陽同期軌道に5.5t、また有人宇宙船なら地球低軌道に12.5tとされる。これまで長征二号、三号、四号が担ってきた主力ロケットの座を引き継ぎ、通信衛星や地球観測衛星などの人工衛星や、有人宇宙船を打ち上げる主力ロケットになる予定となっている。

 まずは小型の長征六号が今年中に打ち上げられる予定で、それに続いて2016年4月に長征七号が、また2016年中に長征五号の打ち上げが予定されている。

 また、新型長征ロケットの開発と並行して文昌衛星発射センターの建設も進められている。文昌衛星発射センターは酒泉、太原、西昌の各センターに続く、中国にとって4か所目の宇宙基地で、「中国のハワイ」として有名な海南島に造られている。

■2015年长征七号合练 - 就爱飞行!
http://www.9ifly.cn/article-5727-1.html

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