日銀、物価上昇率を大幅下方修正 予想がつかない原油価格下落が影響
2015年1月29日 08:24
日本銀行は1月21日、金融政策決定会合を開き、「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」の内容について改めて見直しをはかる必要があるとした。日銀の当初目標は「2年間で物価上昇率を2%引き上げる」というものだったが、2年での達成は困難だと計画を修正。日銀はエネルギー価格の下落で物価も0.7%~0.8%ほど下がるという試算を明らかにし、2015年度の消費者物価指数(生鮮食品と消費増税の影響を除く)の上昇率を1.0%に下方修正した。
日銀の黒田総裁は金融政策決定会合後の記者会見で、計画を一年伸ばし、16年度中の達成を見込むと述べた。背景にあるのは原油安だ。下落が続く原油価格だが、長引けば日本経済に与える影響は深刻なものとなりそうだ。黒田総裁は物価上昇率が思うほど伸びない原因を「原油価格の下落がもっとも大きな要因」として、「原油価格の下落効果が落ち着けば、物価上昇はこれまでの予想どおり上昇していくだろう」と考えを述べた。
修正後の物価上昇率見通しは、14年度が0.9%で、15年度が1.0%。14年10月の時点では14年度が1.2%で15年度が1.7%だったことから、かなりの下方修正だ。しかしこの修正も幾分か楽観的な数字から成り立っているようだ。日銀の予想は原油価格が1バレルあたり55ドルから、今後一年間で70ドルに上昇すると仮定して算出されたもの。しかし原油安が予想どおり解消される保証はどこにもない。
原油価格は今年1月、1バレルあたり40ドル台後半で推移している。供給過多となっている原油だが、石油輸出国機構(OPEC)は未だ減産の方向で調整するという判断にはないようだ。国際エネルギー機関(IEA)の発表では本年度後半には北米の供給量が減る見通しであるというが、仮にそれが実現したとしてもOPECの方針が変更されない限り、原油価格は下落したままだろう。原油価格が70ドルまで回復するという想定は、あまりに楽観的としかいいようがない。先行きが見通せない中、下方修正した物価上昇率についても懐疑的にならざるをえない。(編集担当:久保田雄城)