農業を始めたい人は多くても大きな障害 農地の貸し手が増えない理由とは

2015年1月26日 11:58

 農地中間管理機構(農地バンク)が2013年12月に発足してから、一年がたつ。耕作放棄地の拡大を阻止するために安倍政権が打ち出した目玉政策の一つだが、成果が上がっているという話は聞こえてこない。そればかりか話題に上ることすらほとんどない。農業改革は今、どうなっているのだろうか。

 新・農業人フェアという、就農希望者を対象としたイベントがある。各地で開催されているが、会場はどこも多様な年齢層の人で賑わっている。特に若い人に農業は人気で、新規参入者も増加傾向にある。しかし農業に参入したい者を拒む壁が農地だ。農業を始めたくても土地がない人や企業が大勢いる。その一方で、耕作放棄地の増大、また土地の細分化などによる利用効率の低下も、農業の将来にとっての大きな問題となっている。

 つまり現在、農地を手に入れたい人がいる一方で、耕作放棄地が広がるという矛盾した状態になっている。農地の流動性を高め、不要な人から必要な人へと渡るようになれば、問題は解決するように思える。この、農地の仲介を行うために作られたのが、農地バンクである。

 その農地バンク、発足して一年あまりたったが、活用はなかなか進まない。借り手がいないのではない。農地の供給が伸びないのだ。たとえば宮城県では、農地を借りたいという希望は合計で2万ヘクタールを超える。しかしながら14年12月現在、供給できそうなのはわずか750ヘクタールに過ぎない。

 その理由は様々だ。たとえば賃借期間の10年という単位。高齢化が進む農家にとって、10年農地を貸した後で農地を返却されても耕作放棄地にするしかないという懸念や、10年後、本当に貸した農地を返してもらえるのかという不安もある。よく知らない人に土地を貸すことに対する不安もあるようだ。政府は各種助成金などでてこ入れを図るようだが、本当にうまくいくのだろうか。

 農地の貸し借りを円滑にし、農地を集約するという制度はこれだけではない。09年に創設された農地利用集積円滑化事業や、農地保有合理化事業などもある。これまでに行われた政策がいずれも成果を上げていないようの思われる。農地バンクがうまくいくためには、過去の施策を分析、失敗の原因を究明する必要があるのではないだろうか。(編集担当:久保田雄城)

関連記事

最新記事