NYの視点:ECBのQEバズーカ、懸念はリスク共有

2015年1月23日 07:01


*07:04JST NYの視点:ECBのQEバズーカ、懸念はリスク共有

欧州中央銀行(ECB)は1.1兆ユーロ規模の量的緩和(QE)を発表した。デフレ回避を目指す。ECBは各月600億ユーロ規模の国債などの資産購入プログラムを3月から開始しとりあえず2016年9月まで継続する。ドラギECB総裁は「インフレで、中期目標である2%近く達成が見通せるまで実施していく」と強調。投資家は「実質的に無制限のQE」とECBの措置を好意的に捉えた。総額は、市場平均予想であった5000億—6000億ユーロを上回る大規模なものとなった。

ドラギECB総裁は「インフレは引き続き予想を下回り、最近の原油価格の急落が最近のヘッドラインインフレを引き下げている」と述べ、賃金や物価への潜在的な2次的波及リスクが上昇しており中期的な物価の展開にも悪影響を与える可能性を指摘。ECBの決定を擁護した。

投資家はQEの規模を好感したものの唯一の懸念材料がリスクの共有だと見ている。資産購入で、20%がリスク共有となるが、残り80%の損失リスクは各国の中央銀行に残りプログラムをかなり複雑化する。ドイツを満足させることを目的としたドラギECB総裁の苦肉の策ともとれる。ドイツは、アイディアが「ユーロ圏債務の貨幣化だ」としてQEに断固として反対姿勢を貫いている。

完全なQEでは中央銀行が銀行から資産を購入し、いざとなれば貨幣を印刷できる。ECBのQEの場合、資産は貨幣を印刷する権利のない中央銀行に残ることになる。資産に損失が発生した場合、各国中銀が政府から支援が必要になる可能性も出てくる。リスク共有に関する投資家などの懐疑的見方に対し、ドラギECB総裁はユーロ圏に共有の財務省が存在しないため、損失を補償する中央銀行の存在がなく、広範なリスクの共有は問題となることを論じている。

■ECBのQEで鍵となるポイント

・規模:各月600億ユーロ(総額1.08兆ユーロまたはそれ以上)
・期間:2016年9月または、インフレが目標である2%達成見通しがたつまで
・対象となる資産:投資格級の債券を購入、ギリシャのような債務国は国際救済策の条件により追加的な制限が加えられる
・リスク共有:資産購入規模の20%がリスク共有。残り80%の損失リスクは各国の中央銀行に残る

ECBの行動を受けて金融機関はユーロ・ドルの見通しを軒並み引き下げた。UBS銀行は3か月のユーロ・ドル見通しを従来の1.15ドルから1.10ドルへ引き下げ。6か月の見通しを従来の1.18ドルから1.10ドルへ引き下げた。英HSBC銀は年末のユーロ・ドル見通しを1.15ドルから1.09ドルへ引き下げた。《KO》

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