2016年木造マンション建設ラッシュか 放置人工林対策も

2015年1月15日 10:15

 林野庁は、欧州で利用されているCLT工法に着目し、2016年度から木造の中高層ビル建設を促進していく計画だ。CLT工法は欧州では1990年代から普及し始めたが、国内では14年1月19日に施工されたばかりの新しい工法。CLTとは「Cross Laminated Timber(クロス・ラミネイティド・ティンバー)」の略で、日本では「直交集成板」という名称だ。

 集成材は複数の板を特殊な方法で接着させ、強度を高めたものだが、これまでは板の繊維を同じ方向に合わせて作るのが一般的だった。しかし、CLT工法では繊維の方向をクロスさせて板を張り合わせる。一般的な集成材よりも耐震性や断熱性に優れ、厚みを薄くしても高い強度を保つため、幅広い用途で使用できる。

 木造建築と言えば、1~3階程度の低層の建物をイメージするだろう。4階以上にもなれば鉄筋コンクリートが当たり前だと言ってもいい。しかし、欧州ではCLT工法を使った9階建ての集合住宅の建設がすでに実現している。鉄骨を組み、コンクリートが固まるまでの期間を要するRC造(鉄筋コンクリート構造)と比較すると、工期が4~5ヶ月短縮できるというメリットがある。

 林野庁はCLT工法によって国産材木のスギなどの利用を促進し、林業の活性化につなげていきたいとした。スギは比重が軽いため、CLTに適している。日本の森林資源の約6割は人工林が占めており、木々の成長などによって毎年約1億立方メートル程度ずつ、増加している。

 豊富な森林資源があるにもかかわらず、国産材木は、安価な輸入材木に押されて需要が減っている。国内全体で流通している木材のうち、国産材はわずか3割以下だ。このため、国内には放置状態の人工林も少なくない。間伐など手入れが行き届いていない山では日光が入らず、下草が生えない状態となり、土壌自体が弱くなってしまう。土砂崩れなどの危険性も高まるため、放置人工林対策としてもCLT工法の普及に期待が高まっている。

 現時点ではCLT工法の建築はテスト段階だ。防火性能や耐震性がクリアできれば、早ければ来年度から高層木造マンションが街のあちこちでみかけられるようになるかもしれない。(編集担当:久保田雄城)

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