【2014年の振り返りと2015年の展望】ゲーム業界 計算が立ちやすい「レジェンド」のリメイク、コラボが流行るか?
2015年1月9日 23:03
■「黒猫」「白猫」のコロプラが強かった年
2014年のゲーム業界は2月22日のソニー<6758>「PS4」発売の話題から始まった。欧米では2013年11月に発売されていたが、日本では3ヵ月も遅かった。ガンホー<3765>の「パズル&ドラゴンズ」やミクシィ<2121>の「モンスターストライク」のようなスマホゲームが全盛で、「今さら家庭用ゲーム機でもないだろう」と色眼鏡で見られがちな日本では、あえて年末商戦を避けたという見方もあった。
夏休み前後には「妖怪ウォッチ」の大ブームがやってきたが、これはコミック、テレビ番組から関連グッズまで連携したメディアミックスの企画の勝利。ゲーム単独のヒット作としてはコロプラ<3668>が「魔法使いと黒猫のウィズ」から7月リリースの「白猫プロジェクト」への黄金リレーに成功し、9月期本決算は売上高3.2倍、営業利益は4.1倍、純利益4.1倍と驚異的で、ガンホー、ミクシィとともに「ゲーム業界・新御三家」と並び称される存在までのし上がった。「白猫プロジェクト」は「Google Play 2014年ベストゲーム」、「App Store Best of 2014今年のベスト(iPhoneベストゲーム、iPadベストゲーム)」を受賞している。
一方、「ゲーム業界旧御三家」のDeNA<2432>、グリー<3632>、サイバーエージェント<4751>は、ともに新しい事業に将来を託す戦略を進めている。DeNAは8月に遺伝子検査サービスに進出し、9月には住・インテリア、女性向けファッションにそれぞれ特化して情報提供を行う「キュレーションサービス」を手がける企業2社を買収してメディアコンテンツ分野を強化した。その業績は4~9月期決算の純利益が50%減と苦しいが、四半期ベースでは4~6月期に比べて7~9月期は上向きになり、9月発売のスマホ向けゲームアプリ「ファイナルファンタジー・レコードキーパー」がヒットして前途に光も見えてきた。
しかし、DeNAとかつて「ソーシャルゲームの両雄」と呼ばれたグリーは5月のブランド品買取サイト、6月の会員型ホテル当日予約アプリ、7月の住宅設備の定額制リフォームサイト、8月の介護施設の検索サイト、訪問型保育のマッチングサイトなど新事業を次から次へと繰り出したが、ニュースになるような成果をあげたものは一つもなく「下手な鉄砲、数撃ちゃ当たる」の感もある。ゲームのヒット作も出ず、こちらはいまだ今後は五里霧中の状態と言えそうだ。なお、サイバーエージェントの業績は依然好調で、目下、LINE関連事業に経営資源を集中させている。
■ヘッドマウントディスプレイは燃料電池車?
2015年のゲーム業界のトレンドとして話題にのぼっているものに、かぶれば視覚と聴覚のバーチャルリアリティを実現する「ヘッドマウントディスプレイ(HMD)」がある。ゲームショウなどで体験展示すれば「すげぇ」「すげぇ」と大人気。しかしこれは自動車で言えば「燃料電池車(FCV)」のようなもの。どちらも「未来のイノベーションの方向性」を示すという点では非常に意義のある存在だが、いざ使うとなるとインフラが整っておらず価格もまだまだ高い。コンテンツがほとんど揃っていない段階で話題ばかり先行しているHMDは、水素ステーションができ始めた段階で話題ばかり先行しているFCVに似ている。どちらも2015年段階での普及は微々たるものだろう。先物買いするならもう少し先のほうがいいかもしれない。
■「レジェンド」の力に頼りたい理由とは?
ゲーム業界は新しいようで、1983年の任天堂<7974>の「ファミコン」登場以降で数えても32年の歴史がある。その間、無数のゲームが登場しては消えていったが、中には「レジェンド」として語り継がれ、今なお多くのファンの心をつかみ、プレイされている名作ゲームもある。そんな「レジェンド」がスマホゲームに単に移植されるのではなく、新しい内容にリメイクされたり、他のゲームとコラボレーションする動きがあり、それが2015年、話題を呼んでゲーム業界のトレンドとして定着するかもしれない。
これまでもコーエーテクモ<3635>のレジェンド「信長の野望」のソーシャルゲーム版「100万人の信長の野望」がDeNAの「モバゲー」からリリースされたような動きはあった。2014年はスクウェア・エニックスHD<9684>が、レジェンド「ドラゴンクエスト(ドラクエ)」をもとにCygamesと共同開発したスマホ向け「ドラゴンクエストモンスターズスーパーライト」を1月にリリースしてヒットさせた。続いて9月には第1作が1987年にリリースされたレジェンド「ファイナルファンタジー(FF)」をスマホ向けに新企画でアレンジした「FF・レコードキーパー」が登場。ヒットしてDeNAの救世主になった。
2015年、ガンホーは4月に任天堂<7974>「ニンテンドー3DS」向けに「パズドラ・スーパーマリオ版」をリリースする。もはやスマホ時代のレジェンドと言ってもいい「パズル&ドラゴンズ」と、ファミコン時代のレジェンド「スーパーマリオ」の時空を超えたコラボレーション企画である。「レジェンド」になった伝説的な名作ゲームは他にもあり、「温故知新」でどんなリメイク、コラボが出てくるか楽しみな年になりそうだ。
その背景には、主流がガラケーのソーシャルゲームからスマホゲームに変わると、製作費がうなぎのぼりに高騰していることがある。開発費用が高いと、投資を回収できない失敗作が続けばゲームメーカーの経営が窮地に追い込まれる恐れがあり、なかなか失敗できなくなった。その点、「レジェンド」には固定ファンがいるだけでなく、名作になっただけの質の高さがあるので、リメイク、コラボの際に今のゲームユーザーに合うように工夫すれば失敗に終わるリスクは小さくなる。
それは映画会社が、かつてヒットした名作を現代風にリメイクして新作として上映するようなもの。続編同様に計算が立ちやすい「安心企画」である。音楽CDでも旧盤の再発売やオムニバス企画は頻繁にある。ゲームの世界も、30年以上経過してそんなことができるだけの蓄積ができてきたのだ。
だから投資家としても、ヒットの確率が高い「レジェンドになったゲームのリメイクやコラボ」のニュースには要注目。リメイクしてオリジナルとは大きく変わったり、コラボの組み合わせにちょっと無理がありそうなものでも、レジェンドの貫禄のおかげでヒットするかもしれない。(編集担当:寺尾淳)