【鈴木雅光の投信Now】純資産総額も本数も増えているけれど・・・

2015年1月5日 13:53

 投資信託協会が発表している国内公募投資信託の資産増減状況によると、2014年11月末時点の純資産総額は、前月に比べて4兆6747億2800万円増加し、92兆6957億3600万円に。運用ファンドの本数も18カ月連続で増加し、5366本になった。いよいよ純資産総額100兆円乗せも目前となっている。

 ただ、その中身を見ると、まだ投資信託が短期的なリターンを稼ぐためのツールとして用いられているフシが感じられる。

 というのも、追加型株式投資信託の資金増減を見ると、11月末のそれは、前月比で1兆5508億3100万円の資金流出になっているからだ。金額ベースで1兆円を超える資金流出が生じたのは、1989年1月から見ても一度もない。

 なぜ大量の資金流出が生じたのか。恐らく11月末にかけて国内株価が上昇すると共に、円安が進んだからだろう。国内株価の上昇は日本株ファンドの、円安は海外市場に投資するファンドの基準価額を押し上げる。それらの利益確定売りが生じたと考えるのが自然だ。

 その一方で、投資信託の解約資金などをプールしておくMRFの純資産総額は、前月比で1兆7688億200万円の増加となった。これは、追加型株式投資信託の解約資金が、そのままMRFの買付資金に回ったことを意味している。

 こうした利益確定売りの動きは、一昨年末にも見られた。2013年11月、12月の両月で、追加型株式投資信託からは、併せて9606億4100万円の資金流出が生じている。これも、年末にかけて株価が上昇したことに加え、2014年1月から始まるNISAに合わせて利益確定の解約が生じたためと思われる。またその一方でMRFへの資金流入額は、両月で2兆2912億5100万円にも達した。

 そもそも投資信託は、目先の値上がりで解約し、利益確定をするという短期売買には不向きな商品だが、こうした動きは、ファンド保有者が自発的に行っているというよりも、むしろ販売会社の営業担当者によって誘導されているとも考えられる。

 もし、12月末の数字で、MRFの資金流出額が急増する一方、追加型株式投資信託への資金流入額が急増すれば、11月に利益確定の解約が行われ、12月に別ファンドへの乗換営業が行われたという見方も出来る。12月末の数字が出るのはまだ先だが、仮にそうなったら、投資信託の中身は、純資産総額や運用ファンド本数の増加という表面的なポジティブ要因とは裏腹に、まだ不健全な状況であると考えられる。(証券会社、公社債新聞社、金融データシステム勤務を経て2004年にJOYntを設立、代表取締役に就任、著書多数)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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