空運業界 ANAがJALを抜きナショナルフラッグの座を確実に

2015年1月2日 20:23

 空運業界にとって2014年は、ANA(全日本空輸)<9202>がJAL(日本航空)<9201>をついに上回り、名実ともにナショナルフラッグとなった転換の年だったと言えるだろう。JALは10年に倒産、その後関連子会社の売却や大規模なリストラなど、大規模な経営改革を行い、12年に再上場を果たし、今年までに何とか回復傾向に乗せてきた。しかし、そうしたここ5年の間にANAとの差は開き、倒産以前のJAL最大手・ANA二番手という力関係は逆転してしまった。

 そしてそれを象徴する出来事が今年2つあった。1つめは、今年5月に、国際線座席キロ数でついにANAがJALを上回ったことだ。座席キロ数とは、運航座席数×飛行距離(単位はkm)によって算出される指数で、そのまま運輸規模を表している。今年5月のANA国際線座席キロ数は29億5千万旅客キロ(前年同月比25%増)、JAL国際線座席キロ数は29億1千万旅客キロ(前年同月比7.8%増)で、わずかながらANAがJALを追い抜いた。今年上半期累計ではまだJALが勝っているものの、増加率なども考えると、年間累計ではANAが勝利し、来年以降はさらに引き離していく可能性が大きい。

 もう1つは、8月に次期政府専用機・米ボーイング「B777-300ER」の整備がANAに委託されたことだ。現行の政府専用機の整備は20年以上JALに委託されてきた。現行機の老朽化に伴い、次期政府専用機のプレゼンが両社から政府に行われていたが、ここでもANAが勝利することとなった。その背景には、業務規模でANAが上回ってきたことだけでなく、政権の移り変わりによる影響もあったと思われる。

 JAL倒産時に政権を握っていた民主党は、3500億円もの公的資金投入や、5000億円の債務放棄措置など経営再建の後押しを行った。当時野党だった自民党は、そうした民主党政権のJALへの異例とも言える救済措置に対し、ANAとともに批判的な立場にあった。その時の結び付きが、今の自民党政権がANAを優遇している要因となっているという見方もある。3月に行われた羽田発着国際便増枠でも、ANA・11便、JAL・5便と明らかな待遇の差があった。こうした後ろ盾もあり、ANAの堅調は来年以降も続くと考えていいだろう。

 大手2社以外の動向では、ANA、JALに続く国内3位のスカイマーク<9204>の業績悪化が大きなトピックだった。スカイマークはヨーロッパの航空機メーカー「エアバス」から大型機の売買契約を進めていたが、収益悪化により契約が解除され、損害賠償を求められる可能性も出てきている。12月に入り、スカイマークは危機脱出に向け、ANA、JAL両社に共同運航を申し入れた。両社ともに支援要請を受け入れ、15年春から5年間共同運航が行われる見通しだ。国土交通省は、5年の内に再建へメドを付け自立するようスカイマークに促している。

 来年以降の空運業界の展望だが、しばらくはこの秋から続く原油安の恩恵で安定すると見られている。また、日本への観光客の増加も安定した収益につながっている。特に「おもてなし精神」での機内サービス面の充実が、リピーター増加の肝となっているようだ。そうした顧客満足度の点でもANAがJALをリードしているという利用者の声も多い。そういった点も含め、JALがどれだけANAとの差を詰められるかと、スカイマークが業績悪化から復活に向け動き出せるかが、15年のポイントとなってくるだろう。(編集担当:久保田雄城)

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