理研、大腸菌が抗生物質耐性を持つようになる仕組みを明らかに
2014年12月20日 21:38
理化学研究所の古澤力チームリーダー・鈴木真吾研究員らによる研究グループは、複数の抗生物質に対して耐性を持つ大腸菌の解析を行い、少数遺伝子の発現量データだけで抗生物質への耐性を定量的に予測できる新手法を開発した。
複数の抗生物質が効かない多剤耐性菌の出現は世界的な問題となっており、世界保健機関(WHO)も、耐性菌の出現によって、ありふれた感染症や軽度のけがで命を落としかねない「ポスト抗生物質時代」が到来すると警告している。しかし、耐性獲得の進化過程は、ゲノム配列や細胞状態の変化などが絡み合う複雑な仕組みであるため、詳細は明らかになっていなかった。
今回の研究では、大腸菌を長期に植え継ぐことによって、生体内で起きる抗生物質耐性の進化プロセスを生体外で再現できる実験システムを構築した。その結果、1つの抗生物質への耐性獲得が、ある抗生物質に対しては耐性を上昇させ、別の抗生物質に対しては耐性の低下を引き起こすことが明らかになった。さらに、回帰分析とクロスバリデーション法を適切に組み合わせることで、7~8個の遺伝子の発現量を調べることで様々な抗生物質への耐性能を高い精度で予測できる手法を開発することに成功した。
今後は、発現量の変化とゲノムの変異などを統合的に解析する手法を応用していくことにより、耐性獲得の進化プロセスを予測・制御する手法の開発や、新規抗生物質の発見に貢献できると期待されている。
なお、この内容は12月17日に「Nature Communications」に掲載された。