シャープ負債整理の流れにメド 再建に向け「目の付けどころ」は変えられるか
2014年12月17日 14:19
シャープ<6753>は米太陽電池子会社リカレント・エナジーの売却を発表した。長い経営再建の途上にある同社だが、ようやく負債の整理にメドが付き、新たな局面に入りつつある。
シャープは2012年度、13年度の2年間で9200億円もの赤字を計上し、重大な経営危機に陥った。引き金となったのは、液晶事業にこだわりすぎ、甘い見通しで亀山工場や堺工場の液晶生産を加速させたことにあると言われている。代表例は、10年に発売した液晶電子タブレット「ガラパゴス」の失敗だ。堺工場に1兆円を投資し100万台を見込んで開発・販売するも、マーケットニーズに合わず、わずか1万台しか売れずに販売は中止。さらに、当時拡大路線にあった経営方針が裏目に出始め、負債はみるみる膨れ上がった。
13年6月に高橋興三社長が就任、片山幹夫元会長ら旧経営陣の拡大路線から縮小路線へと舵を切った。海外の関連子会社の売却を続け、今回リカレント・エナジー社を売却したことで、そうした負債整理の流れにも一区切りがついた形だ。なお、海外を中心に拡大していた太陽電池事業に関しては、従来の太陽光発電モジュールのシステム事業から、クラウド蓄電池などを使ったエネルギーソリューション事業に切り替え、中長期的に再編していく見通しのようだ。
再建に向け、家電事業でもチャレンジが続いている。11月には人工知能機能・クラウド機能の付いたお掃除ロボット「COCOROBO」〈RX-V200〉が発表された。この時にネットを中心に話題になったのが、限定モデル「プレミアムなCOCOROBO〈妹Ver.〉」だ。こちらは、声優の音声とアニメキャラ風のイラストを使い、萌え市場に特化した予約限定品。シャープ公式Twitterアカウントは商品情報以外に面白ツイートをすることでも人気を呼んでいるが、そちらのアカウントから大きく拡散され注目を集めた。直接的なヒットにつながるかはともかく、宣伝面では、従来のシャープから模索しながら変化していっていることを伝える効果はあっただろう。
縮小路線になり、各分野での再編・挑戦が続いているシャープだが、メインに据えているのはやはり液晶事業だ。独自に開発した高精細液晶技術「IGZO」を使った4Kテレビや、4Kスマートフォンの開発に力を入れている。しかし、4Kテレビに関しては「そこまで高画質が必要なのか」、「8K開発の話もあるし、テレビを買い替えさせたいだけなのでは」と消費者から疑問の声も多い。さらに、2年前の経営危機が消費者のニーズを無視し、液晶にこだわりすぎたという印象もある。14年度4~9月中間期決算は4期ぶりの黒字に転じ、回復傾向にあるが、「液晶のシャープ」と呼ばれた過去の栄光にあぐらをかいてはいられない状況はまだ続くだろう。
良い物を作れば売れるという視点から、売れるもの・ニーズに合ったものを作るという視点へと変われるか。まさに今シャープは、「目の付けどころが」問われている。(編集担当:久保田雄城)