政治に振り回される待機児童問題と、その責任を感じさせない「産まない方が悪い」発言
2014年12月13日 20:22
自民党の麻生太郎副総理兼財務大臣が12月7日、少子高齢化・社会保障問題について「高齢者が悪いというイメージがあるが、子どもを産まない方が問題だ」と発言したことが、物議をかもしている。総理時代からが失言が目立ち、どうにも大多数の一般市民との意識のズレを感じさせるところがある麻生副総理だが、少なくとも一国の副総理という立場にある人物としては、発言が無責任だと言わざるを得ない。
実際のところ、若者・子育て世代は、「子どもを産みたくても産めない」という意識の方が強いだろう。子育て世代への社会保障が整っていない現状では、出産育児後の社会復帰や、男性の育児休暇など、安定した子育て環境の確保は非常に難しく、不安を抱えている人は多い。
そんな中、政府は2015年4月から「子ども・子育て支援新制度」を実施する予定だが、この制度で示された待機児童問題解決にも暗雲が立ち込めている。この制度は17年度に待機児童をゼロにすることを目標としているが、17年時点で保育の必要な0~2歳児の数に対し、保育所定員数が約5万人分不足する見通しだと、塩崎恭久厚労相が11月末発表した。
原因の1つめは、新制度導入に向け、今年5月に変更された認定こども園などの運営費基準の変更だ。この変更で多くの園が減収になっており、受け入れを増やすこと自体が難しくなっている。そして2つめは、消費税増税先送りによる財源不足。「子ども・子育て支援新制度」の予算1兆円超のうち、7000億円は増税による収入を見込んでいた。この財源不足をどう補填するか、まだ具体案は示されていない。政府の見通しの甘さが浮き彫りとなっている。
また、待機児童問題は、公表されている数字以上の「隠れ待機児童」も懸念されている。待機児童の多さなどから保育園への申し込み自体をしていない家庭もあり、そうした場合は自治体に待機児童としてカウントされない。その数は41自治体で3万人、国公表の4.8倍にものぼるという報道もある。
衆議院解散総選挙は、安倍首相によると「消費税増税先送りと、アベノミクスの信を国民に問う」という理由だった。しかし、それにより引き起こされた政治の混乱により、毎日不安を抱えながら子育てを行っている親の苦しみや、人員・予算不足で苦しむ保育園・保育士の混乱はさらに大きくなっている。
「子どもを産まない方が問題だ」――その言葉からは、とてもこうした待機児童や、子育て世代への社会保障に本気で取り組む姿勢は見えてこない。予算増、増園だけでなんとかなることではないし、時間もかかる問題だろう。しかし、それ以前に子どもを産みたくても不安を抱え悩んでいる人や、子育て中の親、現場の保育士の方々の想いを軽視するような政府では、問題解決に期待などできないだろう。せめて、本気の姿勢を見せてほしい。(編集担当:久保田雄城)