京大、突発性難聴症例の新しい治療法を開発
2014年12月12日 23:03
京都大学の中川隆之講師らによる研究グループは、標準的な治療法で効果がない突発性難聴症例に対する新しい治療法を開発した。
突発性難聴の標準的な治療法はステロイドの全身投与であるが、2割の症例では全く改善が認められず、3割は不十分な聴力回復にとどまることが分かっている。これらの症例に対しては、ステロイドを鼓膜内に注入する治療法が取られているが、有効性には幅がある。
今回の研究では、ステロイド全身投与の効果が認められなかった突発性難聴120例に対して、無作為に「内耳の聴覚に関係する細胞を保護する作用を持つインスリン様細胞増殖因子1(IGF1)をゼラチンハイドロゲルというドラッグデリバリーシステムを用いて内耳に徐放する治療」か「ステロイド中耳注入治療」のどちらかを行った。その結果、聴力改善には統計的な有意差がないが、純音聴力検査閾値の経時的な改善量と安全性ではIGF1治療の方が優れていることが分かった。
研究メンバーは、「最も頻度の高い身体障害の要因である難聴は、今後の高齢化社会を考慮すると解決すべき重要な医学的課題の一つです。(中略)今後、一般的な保険診療で行える治療法とするための臨床治験への橋渡しを行っていきたいと考えます」とコメントしている。
なお、この内容は「BMC Medicine」に掲載された。