【鈴木雅光の投信Now】業界にちょっとした変化、2つの注目点

2014年12月9日 11:13

 以前、この欄でも触れた金融モニタリングレポート。どうやら金融庁は、銀行による投資信託の販売姿勢についてえらくご不満らしい。同レポートのなかで、短期乗換え営業に対する問題点を語気強く指摘していた。

 当然と言えば当然だろう。地方銀行の中には、顧客に販売した投資信託を、何とたったの1か月間で他のファンドに乗り換えさせているという話も、漏れ伝わってくるくらいなのだから。MMFやMRFならともかく、株式や債券を組み入れて運用する投資信託で、1カ月の高速回転売買は、百害あって一利なしといっても良い。

 結果、金融庁が金融機関の営業担当者の評価制度にまで首を突っ込んで、事細かな「指導」を行うことになる。

 さて、こうした金融庁の活躍ぶりもあってか、投資信託業界にもちょっとした変化が見られるようになってきた。

 2つの注目する動きがある。

 ひとつは、地方銀行が直販系投信会社のファンドを積極的に扱うようになってきたこと。これまで残高が伸び悩んでいた直販系投信会社にとって、運用ファンドがより多くの人の目に触れるようになる。なかには、すでに販売している投資信託の商品ラインナップを見直したり、あるいは個人向けDCに直販系投信会社のファンドを採り入れようとしたりする動きもある。

 そしてもうひとつが、金融機関系列の投資信託会社が、直販に力を入れようとしていることだ。これまで資本関係にある金融機関を販路の中心にしていたが、直販専用のファンドを立ち上げ、販売金融機関を通さず、自分たちで直接、ネット経由で投資信託を販売するのだという。

 多くの投資信託会社は、これまでの決して短くはない歴史のなかで、常に運用ファンドの販売については、資本関係にある販売金融機関の走狗になり下がっていただけに、投資信託会社と販売金融機関との間にこのような距離が生まれてくるのは、受益者としても歓迎するべきだろう。

 投資信託は長いこと、金融機関の手数料稼ぎのツールとして利用されてきた。それだけに、こうした一連の動きが、本当の意味で投資信託業界の浄化につながり、かつ受益者の大半を占める個人にとって優れた資産形成のツールに変わっていくことを、切に願っている。(証券会社、公社債新聞社、金融データシステム勤務を経て2004年にJOYntを設立、代表取締役に就任、著書多数)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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