パルコや地方自治体も参入 クラウドファンディングは日本に根付くか?
2014年12月8日 12:01
インターネット上で不特定多数の出資者を募り、集めた小口資金で事業を開始するクラウドファンディング。出資者が商品やサービスを対価や配当の形で受け取れるスタイルや、賛同した出資者が寄付の形で行うスタイルなど様々だが、新たなビジネスモデルとして注目を集めている。海外では、クラウドファンディングを利用し、ニッチながらもオリジナリティ溢れるアイデアで成功しているクリエイターや会社も少なくない。
全世界では5000億円規模のビジネスモデルに成長しつつあるが、日本にはまだ浸透しているとは言い難く、市場規模は100億円程度だ。これまでは中小のベンチャー企業などが、商品やサービスの開発資金などを募ることが多かったが、最近になり日本でもより規模の大きな参入が始まりつつある。
流通大手のパルコ〈8251〉は12月中旬から「ブースター」というサイトを立ち上げ、クラウドファンディングの形式で、ファッション、音楽、アニメ、ゲームなどの新事業を始めたい若手クリエイターを募る。クリエイターがパルコに事業計画をプレゼンし、審査に通れば「ブースター」を通し消費者に出資を呼び掛けることができる。資金が集まれば事業を開始し、パルコ側が宣伝や販売の協力、またPARCO劇場を使った公演などもサポートする。若い世代のクリエイターと、同じく若い消費者の感性がダイレクトに反応し合えるビジネスが狙いだ。若者のお財布事情も考え出資金は一口5000円から。パルコが仲介することで、資金が集まらない場合のクリエイター側のリスクも、独自に資金を集める場合より大幅に抑えられる仕組みだ。
自治体でもクラウドファンディングに取り組むところが出てきた。福井県鯖江市は、東京の企業が運営するクラウドファンディングサービス「FAAVO」を活用し、鯖江市を活性化するプロジェクトの公募を行っている。地方でビジネスを始めたいと考えている人や、鯖江にゆかりがある人やメインターゲットだ。市は集まった資金の9割を事業者に渡すという高設定で、事業者が安心してプロジェクトを始められるように配慮。一方で、自治体としてはそうしたプロジェクトを地域振興につなげていき、両者に利益のある形を目指している。すでに、いくつかのプロジェクトに着手しているという。
他にも映画出資や被災地支援活動など、様々な分野でクラウドファンディングは広がりつつある。しかし、中には資金を集めて雲隠れする詐欺行為もあり、顔の見えない相手へ出資することへの抵抗感も根強い。そうした危険性への対応も今後問われることになるだろう。
大企業や自治体が後押しすることで信頼性を増し、また明確な審査基準を設ければそうした危険性は低くできるだろう。しかし、システム以上に、事業者のアイデアと熱意をどれだけ出資者に伝えられるかが、クラウドファンディングの基本だ。そうした正しい姿勢で、日本にも広まっていってほしい。(編集担当:久保田雄城)