バター不足慢性化の不安 根本的解消には酪農業への対策が不可欠
2014年12月6日 20:47
クリスマスシーズンに入り、洋菓子類の販売が伸びる中、バター不足が深刻化している。スーパーなどではすでに品薄状態で、「お一人様一点限り」と制限を設けるも、入荷するとすぐに売り切れてしまう状態だ。特に大量のバターを使う洋菓子店では、十分な量のバターを確保することが難しくなってきており、営業に差支える可能性が広がってきた。
もともと保存がきかない生乳は、賞味期限が短い牛乳や生クリームから優先的に使用され、残りをバターや脱脂粉乳など賞味期限が長い加工品に回している。生乳の生産過多となった場合には保存のきくバターを多く作り、在庫として保管。生乳が不足したときに在庫を放出することで、乳製品全体の安定供給を図っている。
しかし近年、酪農家の廃業が相次いでおり、国内で飼育している乳牛頭数が減っている。生乳の生産量減少により、バターの在庫が減少し、それにくわえて2013年には猛暑で乳牛の多くが乳房炎にかかったことで、生乳不足が顕著となってしまった。これに対し、政府はバター不足解消のために外国から緊急輸入することを決定。5月に7,000トン、9月に3,000トンの輸入を実施しているが、店頭でのバター不足は解消していないのが現状だ。
政府は乳業メーカーに緊急輸入によって仕入れたバターをすでに売り渡しているが、メーカーはこの先もバター不足が続くとみて、出荷制限の解除には慎重になっている。政府は本年度末のバター在庫量を前年度比119.1%まで増加して安定供給を図っているが、根本的な対策が実施されていないうちは、バター不足慢性化への懸念が先だってしまうだろう。
農林水産省が発表する「畜産統計」によると、14年2月1日時点での乳牛を飼育する酪農家戸数は1万8,600戸で前年比マイナス4.1%となった。円安による飼料費の値上げなど経営環境は厳しく、赤字を抱えてしまうケースは珍しくない。過去10年間では約1万戸が離農している状況だ。乳用牛の飼養頭数は139万5,000頭で、前年比マイナス2%となっている。緊急輸入措置はあくまで一時のつなぎにしかならない。国内の酪農事情を精査し、対策をたてることが急務だろう。(編集担当:久保田雄城)