京大らがiPS細胞で筋ジストロフィーの変異遺伝子を修復
2014年11月29日 16:19
デュシェンヌ型筋ジストロフィーという病気がある。ジストロフィンという遺伝子に変異が生じ、筋肉の衰弱が進行していく疾患だ。これまでに様々な方法で遺伝子を修復する治療法の研究が行われてきたが、完全な形でジストロフィンタンパク質を元に戻すことはできていなかった。
京都大学iPS細胞研究所(CiRA)、科学技術振興機構(JST)の堀田秋津助教、京都大学細胞物質システム統合拠点(iCeMS)の李紅梅大学院生らの研究グループは27日、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの患者さんから作製したiPS細胞において、TALENやCRISPRといった遺伝子改変技術を用いて、病気の原因遺伝子であるジストロフィンを修復することに成功したと発表した。
堀田助教らの研究グループは、まずゲノム上の配列の中から、予期しない場所でDNA切断が起きないように、ゲノム全体で1カ所しかない配列のデータベースを作成し、その情報を元に遺伝子の切断部位を決めた。ジストロフィンタンパク質の機能を取り戻すために、研究グループはExon45 skipping、Reading frame shift、Exon44 knock-inという3つの手法を患者由来のiPS細胞に用い、Exon44 knock-in法が最も効果的なアプローチであることを見出したという。
また、核型解析、コピー数多型解析、エクソーム解析により、最も遺伝子変異の少ないクローンを選んだ。最後に選び出されたiPS細胞を骨格筋細胞へと分化させたところ、正常型のジストロフィンタンパク質を発現していることを確認した。これらの結果は、将来のiPS細胞技術による遺伝子治療に向けて重要なフレームワークとなることが期待されるとしている。
このところのiPS細胞の進化には目を見張るものがある。すでに実用化段階と言っていいだろう。デュシェンヌ型筋ジストロフィーは、進行性筋ジストロフィーの大部分を占める大変な難病である。男性のみに発症し、おおよそ10歳代で車椅子生活となる人が多いという。この治療法が一刻も早く確立されることを願う。(編集担当:慶尾六郎)