【鈴木雅光の投信Now】改めて投信のコストについて考える

2014年11月26日 11:28

■「欧州ハイ・イールド・ボンド・ファンド」にみる購入時手数料は実に3.78%

 前回、欧州のハイ・イールド債に投資するファンドについて触れたが、そこで言い足りない分があった。それは購入時手数料のことだ。

 野村アセットマネジメントが設定・運用している「欧州ハイ・イールド・ボンド・ファンド(豪ドルコース)」が今、欧州ハイ・イールド債のファンドでは最も高い人気を集めているということなので、その手数料体系を見てみたい。

 これはウェブなどを通じて簡単に調べられるが、同ファンドの購入時手数料は、何と3.78%もある。一般的に、株式を組み入れて運用する株式型投資信託でも、購入時手数料はせいぜい2%程度だ。投資対象であるハイ・イールド債は、確かにソブリン債などに比べれば高いリターンが期待できるが、株式の期待リターンに比べれば低いわけで、そうであるにも関わらず、フロントで高いコストを受益者に負担させるというのは、どうにも解せない話である。

 次いで運用管理費用(信託報酬)だが、これが年1.728%(消費税込み)。中身を細かく見ると、次のようになっている。

委託会社=年0.87% 販売会社=年0.70% 受託会社=年0.03%

 購入時手数料である3.78%は、その全額が販売会社にもたらされるものだ。そのうえ、販売会社はファンドの純資産の中から、年間0.70%もの分け前を受け取る形になっている。確かに、販売会社は運用期間中、分配金や解約金の受渡業務を行う。が、それはファンドの価値を高めるのとは全く関係がない、単なる事務作業だ。そこに対して支払われるフィーが、委託会社が受け取るフィーと大差がないのは、いかにもおかしい。

 もっと言えば、このファンドは「箱貸しファンド」ともいうべきもので、実際の運用はピムコジャパンリミテッドに丸投げされている。そのピムコの取り分は、委託会社が受け取る年0.87%のうち0.5%に過ぎない。本当の意味で、ファンドの価値を上げるために尽力している運用会社に比べ、事務作業しかしていない販売会社が受け取っている報酬の方が高いのだ。

 こういう不純な投資信託には手を出してはいけない。(証券会社、公社債新聞社、金融データシステム勤務を経て2004年にJOYntを設立、代表取締役に就任、著書多数)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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